I~II期の原発性肺癌に対する標準治療は手術治療(肺葉切除術)である。術後の呼吸機能は切除された肺葉の容積に依存するが、肺癌患者は喫煙歴を有するものが多く、COPDを合併して低肺機能となっているケースが多いため術後呼吸機能が低下しすぎないように手術計画を立てる必要がある。しかし各肺葉の容積は個人差が大きく、肺気腫の分布も上葉と下葉で異なっているため、術後呼吸機能を正確に予測するためには個々の患者毎に肺葉の容積を正確に計測しなければならない。 従来、胸部3D-CT画像からマニュアル法(コンピュータ上で葉間胸膜を放射線科医がトレースすることによって肺葉を分割する手法)で肺の各肺葉の容積を算出することは可能であったが、トレース作業に多大な時間と労力を要するため実用的ではなかった。研究代表者らは3D-CTから肺葉別の容積を半自動で計測するコンピュータ支援診断システム(CAD)を開発し、さらに本研究期間中に全自動で計測するCADに改良した。そして最終年度には本CADによる肺葉容積計測の精度を肺癌患者50症例の術前3D-CT画像を用いた放射線科医による計測実験を行って検討した。結果として半自動・全自動CADの容積測定の精度はマニュアル法に遜色なく、かつマニュアル法と比べて計測にかかる時間と労力を大幅に短縮できることが明らかとなった。本研究結果については平成25年4月に国内学会(第72回日本医学放射線学会総会)で発表し、さらに査読付き論文として呼吸器外科系の英文雑誌Interactive Cardiovascular Thoracic Surgeryに掲載された。 本研究の成果から、肺葉容積計測CADを利用すれば胸部3D-CTから正確な術後呼吸機能を予測することが可能となり、肺癌患者、特にCOPD合併患者の手術治療方針決定に大きく寄与できると考えられた。
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