【目的】320列マルチスライスCTと二酸化炭素を用いた肝動脈造影にて、肝悪性腫瘍支配血管(亜区域枝、栄養血管)同定能の検討を行う。【方法】 症例は、術前3カ月以内にMRIまたは造影CTでの撮影歴がある、腎機能低下または造影剤アレルギーの7症例、35結節(内4結節は撮像範囲外のため除外)。東芝Aquillion One(320列CT)、自動注入機(根本杏林堂)、マイクロカテーテルu7(テルモ)にて総肝動脈よりで造影した。腫瘍へ分布する支配血管(亜区域枝、栄養血管)の描出を腫瘍サイズ、腫瘍存在位置(葉、左右肝動脈との遠近、総肝動脈の前後、椎体を基準に内外側)について2人の放射線科医で比較した。有意差(p<0.05)はカイ2乗検定を用いて計算した。【結果】31結節中9結節で亜区域枝まで、11結節で栄養血管まで同定できた。8結節は、分布する血管は不明であった。支配血管の描出は、腫瘍サイズや内外側の位置とは大きな関連を認めなかった。有意傾向(p=0.052)をもって、S3やS4にて支配血管の描出が良好であった。左右本幹近傍の結節は、分布する血管の同定が困難であった(p<0.01)。総肝動脈より腹側にある亜区域枝の描出は良好であった(p<0.05)。【結論】CO2を用いた320列CTAは亜区域の分枝レベルや栄養血管をある程度の頻度で同定でき選択的な径カテーテル治療を行う上で有用であると考えられるものの、ガスは重力とは逆方向にたまるため、腫瘍の位置によってはガスが走行しやすいように体位変換を行うことも重要と考えられた。
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