研究課題
食道癌に対する放射線治療成績は治療機器、画像診断技術、化学放射線療法の導入などにより飛躍的に進歩しており、手術に匹敵する治療成績が得られるようになってきている。しかしながら、長期生存例が増えるに伴い、心、肺の合併症を来す患者も増えている。これは手術時のリンパ節郭清に準じて広範な照射野が用いられていることが原因である。小さな照射野が望ましいかもしれないが、食道癌では粘膜下層以深に病変が及ぶ場合には高率にリンパ節転移が起きていることがわかっており、安易に小さな照射野も用いにくい。本研究では食道癌の(化学)放射線療法に際して、リンパ節転移のリスクを判別し、それに対応した個別の照射野設定を目的とする。具体的にはバイオマーカーの発現を免疫組織学的に検討し、広い照射野が必要な群と狭い照射野で十分な群の判別を試みる。目標が達成されれば、リンパ節転移のリスクに応じて小さな照射野で十分なグループが特定でき、放射線治療後の晩期合併症を大幅に減らすことが可能となる。また、大きな照射野が必要が群も特定できることから、適切な治療により、リンパ節再発を減らし、治療成績の改善が期待される。研究1年目の本年度は、本学倫理委員会にて研究の推進に関する承認を取り付けた後、食道癌の手術標本20例分について原発巣、リンパ節の標本の切り出しを行い、各種バイオマーカーの免疫染色を開始した。次年度以降も、件対数を増やして免疫染色を継続し、バイオマーカーの発現とリンパ節転移の数、転移部位との関連の検討を行う。
2: おおむね順調に進展している
研究1-2年目の目標は、過去の食道癌手術例の切除標本(リンパ節郭清例)を対象に、そのバイオマーカー発現を免疫組織学的な手法を用いて解析し、リンパ節転移の部位や範囲との関連を検討する。これにより、リンパ節転移を来しやすく広い照射野が必要な群と、リンパ節転移が起きにくく限局照射野で十分な群の判別を試みることであるが、病理標本の収集はすでに終了しており、免疫染色に向けて症例毎、原発巣、リンパ節の切り出しに適した部位を選び、切り出しを開始している。また、症例毎の病理学的な病期、リンパ節転移の程度、再発形式、最終的な予後の調査も開始している。予定通りの進捗状況であり、研究は順調に進んでいると考えます。
2年目も予定通過去の食道癌手術例の切除標本(リンパ節郭清例)を対象に、そのバイオマーカー発現を免疫組織学的な手法を用いて解析し、リンパ節転移の部位や範囲との関連を検討する。これにより、リンパ節転移を来しやすく広い照射野が必要な群と、リンパ節転移が起きにくく限局照射野で十分な群の判別を試みる。研究の3-4年目には、生検標本を用いてリンパ節転移のリスクを評価し、実際に、食道癌の化学放射線療法で照射野の個別化を試みる。すなわち、リンパ節転移を来しやすい群には予防的リンパ節領域を広く設定した照射野、リンパ節転移を来しにくい群には肉眼病巣局所の照射野で治療を行う臨床試験を企画し、リンパ節転移のパターン、治療成績を前向きに検討する。
免疫染色のために各種抗体、試薬、病理標本を作製するための各種機材の購入を行う。情報収集と研究成果の発表のため、各種学会、研究会への参加を予定している。データ分析のためパーソナルコンピュータ、統計解析用のソフトの購入を予定している。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件)
Int J Radiat Oncol Biol Phys
巻: 80 ページ: 1111-1118
10.1016/j.ijrobp.2010.01.065
巻: 80 ページ: ahead of print
10.1016/j.ijrobp.2011.06.1978