研究課題
化学放射線療法の導入により食道癌の放射線治療成績はめざましく改善している。一方で放射線治療に際して最も重要な問題である、どの範囲を照射すべきか?に関しての研究は立ち後れており、特に予防的なリンパ節領域照射の必要性はほとんど研究されていない。広範な照射野は高率に晩期有害事象を来す一方、小さな照射野を用いると無視できない頻度でリンパ節再発が生じ、その救済治療成績も不良である。実際の臨床ではリンパ節転移の可能性が小さく局所照射野で良い症例と、リンパ節転移が高率に発生するため広範囲の照射野が必要な症例が混在していると考えられる。食道癌の(化学)放射線療法に際して、リンパ節転移のリスクを判別し、それに対応した個別の照射野設定が可能となれば、副作用を減らしつつ領域再発を減少させることができ、放射線治療成績が大きく改善することが期待される。この研究では現在まで過去の食道癌手術例の切除標本(リンパ節郭清例)を対象に、そのバイオマーカー発現を免疫組織学的な手法を用いて解析し、リンパ節転移の部位や範囲との関連を検討することにより、リンパ節転移を来しやすく広い照射野が必要な群と、リンパ節転移が起きにくく限局照射野で十分な群の判別を試みる。現時点で40例以上の手術例の標本の切り出しを完了しており、予定している5種類の抗体のうち、2種類の抗体にての染色が終了している。予定したすべての免疫染色が終了後、染色結果と転移リンパ節部位との相関の解析を行う。
3: やや遅れている
本研究では、はじめに食道癌の手術例の切除標本の切り出しを行い、その後COX-2,VEGF-C,CD44,twist,LOXという5つのバイオマーカー(抗体)を用いて外科切除された食道がん組織を免疫組織染色し,その染色パターンと,リンパ節転移や予後など臨床的所見との相関を調査する予定である。計画では平成医24年度中に染色を終了する予定であったが、現時点では2種類の抗体の染色が終了している。しかし、切り出しは終了しており、抗体ごとに最適な染色条件を探っている段階で、平成25年度の前半には染色が終了する見込みである。患者の予後との相関をしらべる予定であるが、40症例の予後の調査は終了しており、こちらは予定通りの進捗状況である。
平成25年度中に食道癌切除例40症例の切除可能食道癌標本のCOX-2,VEGF-C,CD44,twist,LOXの5種類のバイオマーカーの染色を終了、病理的なリンパ節転移、予後、再発形式との相関を調査する。追加で染色するべき新しいバイオマーカーが出てきた場合には追加で染色を行う。平成25-26年度にかけて化学放射線療法を行う食道癌患者の生検標本の染色(前記5種類)を行い、化学放射線療法後の照射野とリンパ節再発パターンとの相関を検討する。最終的には予防域が不要な群と、広い予防域が有効な群との治療前鑑別の方法の確立を目指し、特定のバイオマーカーが特定できた場合にはそれを用いた個別化照射野による化学放射線療法の前向き試験を開始する。
該当なし
すべて 2012
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
Int J Radiat Oncol Biol Phys.
巻: 83 ページ: 559-65
10.1016/j.ijrobp.2011.07.013.
BMC Cancer
巻: 12 ページ: 542
10.1186/1471-2407-12-542.
J Med Case Rep
巻: 18 ページ: 308
10.1186/1752-1947-6-308
Esophagus
巻: 9 ページ: 66-74
10.1007/s10388-012-0321-0