研究概要 |
近年、化学放射線療法の導入により食道癌の治療成績は大きく改善してきている。一方で、放射線治療に際して最も重要な問題である、どの範囲を照射すべきか?に関しての研究は立ち後れており、特に予防的なリンパ節領域照射の必要性はほとんど研究されていない。広範な照射野は高率に晩期有害事象を来す一方、小さな照射野を用いると無視できない頻度でリンパ節再発が生じ、その救済治療成績も不良である。 そこで、食道癌に対する放射線治療の照射野の最適化を進める必要があるが、実際にはリンパ節転移の可能性が小さく局所照射野で良い症例と、リンパ節転移が高率に発生するため広範囲の照射野が必要な症例が混在していると考えられる。食道癌の(化学)放射線療法に際して、リンパ節転移のリスクを判別し、それに対応した個別の照射野設定が可能となれば、副作用を減らしつつ領域再発を減少させることができ、放射線治療成績が大きく改善することが期待される。 本研究では、最近他のがん種でリンパ節転移に関連していることが判明したバイオマーカーCOX-2、LOX、 VEGF-C、Twist protein、さらに放射線治療の反応性に関連している各種バイオマーカーを免疫組織学に検討し、放射線治療に際して、広い照射野が必要な群と局所のみの照射で十分な群の判別を試みる。 今年度は20例の食道癌症例の原発巣の病理標本を用いて、Cox-2, CD44, VEGF-C, LOX, E-cad, P53, CD117(c-kit)の7種類の免疫染色を完了した。また、予後やリンパ節転移の状況と比較するために、患者の詳細なデータを収集、完了した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は20例の食道癌症例の原発巣の病理標本を用いて、Cox-2, CD44, VEGF-C, LOX, E-cad, P53, CD117(c-kit)の7種類の免疫染色を完了した。用いた抗体数は、当初予定より多くの種類で完了することができた。また、予後やリンパ節転移の状況と比較するために、患者の詳細なデータを収集、完了した。 病理標本の評価は、2名の病理医に依頼しており、順調に進んでいる。また、患者の臨床データ(T, N, M,リンパ管侵襲、予後、再発の有無、再発形式、リンパ節再発の有無)のデータ分析も収集、統計ソフトに入力済みで、病理標本の評価を終了し次第、リンパ節転移の予測マーカーの同定のための解析を行う。 これらの達成度より、本研究の最終目標としていた照射野の個別化治療は年度末には症例登録が開始できる見込みである。
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