研究課題
①放射線治療と腫瘍免疫併用における基礎的検討前年度に引き続いて放射線照射と免疫賦活剤併用により、免疫抑制性の環境を克服して抗腫瘍効果を誘導するために、担癌マウスモデルを用いた基礎的検討を行った。具体的には、前年度に同定されたCD4+、CD8+、NK細胞に加えてエフェクター候補としてNKT細胞が同定された。②再現性の高いabscopal effect誘導を利用した各種照射プロトコールの確立前年度に引き続いて雌性7週齢C57BL/6系あるいはMHC classの異なるBALB/c系マウスの右側部皮下にLewis lung carcinoma (3LL) あるいはColon26細胞を(primary tumor)、左側腹部皮下に3LLあるいはColon26/MethAを(secondary tumor)移植後、右側腹部の腫瘍のみに6Gy(6MeV電子線)照射しケモカインECI301を静脈内投与すると従来の報告同様種々の組合せで有意なabscopal effectが観察された。共同研究者の新部はabscopal effectを背景に説明が成り立つoligometastasis/oligo-recurrenceの実臨床症例の集積を続けた。
2: おおむね順調に進展している
本研究のうち研究立案及び放射線照射は、多様な癌腫の集学的治療の経験豊富な東京大学医学部附属病院放射線科治療部(中川恵一准教授)で順調に実施している。臨床試験を見すえた実践的発展を図るため、東大病院22世紀医療センター免疫細胞治療学(メディネット)講座の垣見和宏客員准教授にも前年度に引き続いて適宜助言をいただいている。実臨床でのoligo-recurrence理論提唱者北里大学医学部放射線腫瘍学講座の新部も精力的に分担研究を行っている。細胞・分子生物学的処理においては株式会社エフェクター細胞研究所から免疫賦活剤として質の高いケモカインの提供を受けており、多部門が緊密に有機的連携をしていることで円滑・効率的に研究が進捗している。
abscopal effectの機序の解明 -腫瘍内浸潤細胞数の変化-abscopal effectのeffector cell解明に向けて、フローサイトメーター(FACS)を用いた詳細な細胞生物学的検討でT細胞系が中心的役割を果たしていることが実証されたため、さらに踏み込んで抗腫瘍作用機序の免疫学的な一役を担うと提唱されている High mobility group box-1 (HMGB1) タンパクに着目した。このligandであるDC上に発現するToll様受容体 (TLR) 4の関与を明らかにすべく、抗HMGB1抗体処理下の皮下腫瘍照射実験を行ったところ、抗腫瘍効果が解除された。最終的なrationale確立に向け、アブスコパル効果の本質としてHMGB1が認識するTLR4活性化を介したDCの誘導やその他のeffectorの関与を類推しつつ次世代の研究につながる理論構築を行う。
統計・画像処理の部分が重要であり、当該ソフトパッケージが必要となる。また、残る生物実験系として免疫系の詳細な解析のため、特定の染色試薬とこれに関わる器材の準備が重要なため一定の費用を要する。まとめの学会発表・論文作成にかかる費用も捻出する。
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