研究課題/領域番号 |
23591839
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
瀬尾 雄二 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (00302000)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | がん治療 / 放射線治療 / 効果予測 / LQモデル |
研究概要 |
近年、がんの放射線治療においては、画像誘導照射による照射精度の向上や強度変調放射線治療法の発展により、総線量もしくは1回線量の増加が比較的安全に施行可能となってきた。したがって、今後1回に高線量を腫瘍に投与し、少ない回数で治療を行う寡分割照射法が種々のがんに適応される機会が増加すると見込まれている。しかしながら、これまで放射線生物学的研究は通常分割照射を前提にして行われてきたため、寡分割照射に対する生物学研究は実際の臨床応用に遅れをとっているのが現状である。本研究では放射線生物学的に最適な寡分割照射を施行するために、癌細胞の放射線生存曲線における線量依存性に関与する分子生物学的因子を包括的に探索することを具体的な目的としている。それによって、最適な線量分割を予測できれば新たなタイプのオーダーメイド放射線治療の開発に寄与する可能性があると考えられる。 癌細胞の包括的データベースとして、本研究ではNCI-60細胞群を利用している。NCI-60は9種の臓器由来の60種類のヒトがん細胞株である。NCI-60細胞群を用いる利点は、分子生物学的特性の解析が既に進んでおり、DNA マイクロアレイによる遺伝子発現情報や癌遺伝子変異情報の大規模データベースが一般に公開されていることにある。今年度はNCI-60細胞群の内、約30種を継代培養して、実験に使用した。低線量から高線量まで(0-10Gy)の放射線照射をNCI-60細胞に対して行い、細胞種ごとに放射線生存曲線を求めた。これらの生存曲線を線形二次モデルに当てはめて解析し、データベースの構築を行ってきた。今後、NCI-60細胞群の全ての固形腫瘍細胞に対して同様に放射線生存曲線を測定する計画である。これらの測定結果と公開されている遺伝子情報との関連を多変量解析し、生存曲線パラメータを予測しうる因子を包括的に検索する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験材料であるNCI-60細胞群の輸入手続に若干の遅延が生じたため、研究開始に遅れが出た。しかしその後、予定通り順調に実験が進行しており、研究はほぼ計画通りに進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に残りのNCI-60細胞群全ての放射線生存曲線の測定を行う。これまでの経過で予定より研究開始に軽微な遅延があり、そのため平成23年度において未使用の直接経費が生じている。しかし、平成24年度前半には予定通り全ての測定が終了できる見込みである。その後、データ解析に移行する予定で、実験計画に変更の必要は生じていない。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度に未使用の経費は次年度の研究費と合わせ、予定されていた細胞実験の消耗品の購入に使用する予定である。研究費の使用目的や実験計画の内容に変更はなく、計画通り遂行する予定である。
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