研究概要 |
昨年度は放射線増感剤TX-2244の作用機序を明らかにするために、種々のグルコースと2-ニトロイミダゾールをハイブリッドした化合物を合成して構造活性相関を行い、6位の修飾は増感活性に不利になることを見出した。本年度は、TX-2244のin vivo放射線増感活性を評価するために、低酸素誘導因子HIF-1の発現に連動してGFPを発現するEMT6/5HRE-GFP細胞を作製し、この細胞を用いて発育鶏卵に移植・形成させた固形腫瘍中の低酸素領域の解析を試みた。受精鶏卵は、37℃、高湿度下で1時間毎に1回転卵して発育させ、発育開始11日目に漿尿膜上の太い血管の分岐部分にテフロンリングを置き、リング内にEMT6/KU細胞もしくはEMT6/5HRE-GFP細胞懸濁液を添加した。発育開始15, 16, 17, 18日目にヘキスト33342を静注して1分後に腫瘍を摘出し、OCTコンパウンドで包埋した。クライオスタットで腫瘍切片を作製し、H&E染色と蛍光観察を行った。結果として、18日目の腫瘍切片の蛍光画像より、マウスと同様、鶏卵に形成させた固形腫瘍内にもHIF-1陽性細胞が存在していることから、低酸素領域の存在が示唆された。しかしながら、マウスに形成した固形腫瘍と異なり、腫瘍内部の血管が少なく、また、血管形成が不十分であった。さらに、15~18日目に単離した腫瘍を比較したところ、15日目において最も強いGFP由来の緑色蛍光が確認され、その後減少していることが示された。そこで、15日目の腫瘍移植鶏卵に対して8 GyのX線を照射したところ、2時間後の腫瘍切片においてHIF-1陽性細胞の減少が観察された。以上の結果より、腫瘍内血管形成の違いによってマウスの腫瘍と異なる低酸素領域とその変化を示したことが示唆された。
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