研究課題/領域番号 |
23591844
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
原 孝光 福島県立医科大学, 医学部, 准教授 (70464542)
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研究分担者 |
岩舘 学 福島県立医科大学, 医学部, 研究員 (00381393)
竹之下 誠一 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (10167489)
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キーワード | 転移 / 放射線感受性 / 乳がん |
研究概要 |
原発腫瘍内の癌細胞は生物学的に不均一となっており、この不均一集団の中から臓器指向性に転移を行う細胞が選択され転移が起こる事が知られている。したがって原発腫瘍とそこから派生した転移腫瘍は同じ組織型であっても転移先によって遺伝子発現プロファイルは異なり、放射線感受性も変化すると我々は推測する。このような背景から実際に親株と転移細胞株の放射線感受性を比較する実験を行うため、前年度までに我々は高肺転移株、高骨転移株を作成していた。そして今年度はさらに親株を同所性にマウスの乳腺組織に移植し腫瘍を形成させ、そこからリンパ節に転移する細胞を回収し増殖させたのち再び同様にしてマウスに移植する1連の作業を繰り返すことによって高リンパ節転移株も作成した。さらにそれらの作成した高転移細胞株と親株の性質の違いを比較検討した。形態学的な違いに関しては弱拡顕微鏡像では捉えられなかった。細胞増殖率は細胞数のカウントと細胞の代謝で評価を行ったが親株と各転移細胞株で有意差は見られなかった。一方、細胞遊走能・浸潤能に関してはそれぞれスクラッチテスト、インベージョンアッセイで評価を行ったが親株に比べ、各転移細胞株すべてで亢進していた。放射線感受性に関してはコロニー形成法で評価を行ったが、親株に比べ各転移株すべてで抵抗性を示した。以上のことから、当初の目的の一つの転移細胞は原発腫瘍とその性質が異なることをモデル系を用いて再現し確認することができた。また臨床で言われている原発腫瘍に比べて転移腫瘍は放射線抵抗性を示し放射線治療において難渋することを実験系で再現し実証することができた。今後、本研究で確立したモデルを用いることにより転移腫瘍の放射線治療法において適正な投与線量の検討や薬剤等を用いた効果的な照射法の開発を行うことが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度までに作成した高転移細胞株と親株の性質の違いを比較検討することができた。形態学的な違いに関しては弱拡顕微鏡像では捉えられなかった。細胞増殖率も親株と各転移細胞株で有意差は見られなかった。一方、細胞遊走能・浸潤能に関しては親株に比べ、各転移細胞株すべてで亢進していた。放射線感受性に関しては親株に比べ各転移株すべてで抵抗性を示した。以上のことから、当初の目的の一つの転移細胞は原発腫瘍とその性質が異なることをモデル系を用いて再現し確認することができた。また臨床で言われている原発腫瘍に比べて転移腫瘍は放射線抵抗性を示し放射線治療において難渋することを実験系で再現し実証することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は親株と各転移細胞株で異なる性質があることを発見した。次年度はさらに親株と転移細胞株で遺伝子発現状態がどのようになっているのか調べていく。また今までの成果をまとめて、学会発表および論文作成を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
米国癌学会の年次大会での発表のための旅費に40万円、その他英文校正など論文作成用に20万円を予定。また論文投稿費として10万円、残りは消耗品等に使う予定である。
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