研究課題/領域番号 |
23591845
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研究機関 | 茨城県立医療大学 |
研究代表者 |
窪田 宜夫 茨城県立医療大学, 保健医療学部, 教授 (20046139)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | フィトケミカル / 放射線増感 / アポトーシス / DNA修復 |
研究概要 |
発癌予防に有効であるとされているフィトケミカルについてみると、多くのフィトケミカルが、悪性腫瘍細胞に対して、アポトーシスを誘導する働きを持つことが報告されている。一方、正常細胞に対しては、アポトーシス誘導作用は小さい。このようなフィトケミカルの作用は、発癌予防のみならず、癌治療にも大きな役割を果たすと考えられる。本研究では、様々なフィトケミカルの癌予防効果に着目し、癌細胞の放射線抵抗性を引き起こす分子機構から、放射線感受性を増強するフィトケミカルを見出し、その放射線感受性の増強を引き起こす分子機構について探り、放射線治療の増感剤としての可能性について検討することである。我々はすでにイソチオシアネートの一種であるスルフォラファンがヒト腫瘍細胞に対して放射線増感効果を有することを見出しているが、その他のイソチオシアネートについて調べること、また我々はHeat shock protein 90(Hsp90)阻害剤が優れた放射線増感剤になりうることを報告してきたが、17AAGなどは肝毒性が問題となっているが、CelastrolやWithaferin AなどのフィトケミカルはHsp90阻害作用があることが明らかにされており、これらHsp90阻害作用のあるフィトケミカルのヒト癌細胞に対する放射線増感効果について、細胞レベルと分子レベルから解析を進める。本研究のゴールは放射線治療、特に放射線抵抗性の腫瘍に対して放射線増感効果のあるフィトケミカルを見出し、その作用メカニズムを検討し、臨床の放射線治療で増感剤として使用できるフィトケミカルを提唱することである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
近年、注目を集めているイソチオシアネート類は、現在、最もがん予防効果の期待されるフィトケミカルである。我々は代表的なフィトケミカルであるスルフォラファン, Allyl ITC、Benzyl ITC、Phenethyl ITCについて、ヒト癌細胞を用いて放射線増感効果を検討した。これらのフィトケミカルでは、スルフォラファンとBenzyl ITCにおいてヒト腫瘍細胞において、大きな放射線の細胞致死効果の増強が観察された。そしてBezyl ITCの放射線感受性の増強には、アポトーシス抑制に働くX-linked inhibitor of apoptosis (XIAP)の発現抑制とアポトーシス誘発に関与するApoptosis protease activating of apoptosis (Apaf-1)の発現増強が関与していることが明らかになった。またヒト癌細胞ではHsp90シャペロンが細胞生存、増殖に大きく関与しており、Hsp90は癌治療の分子標的として注目されてきた。しかし、これまで報告されてきたHsp90阻害剤は、臨床試験で毒性が見られ、より毒性の少ないHsp90阻害剤の開発が求められている。我々は、Hsp90阻害効果のあるフィトケミカルでるcelastrolが放射線増感効果のあること、そしてその分子メカニズムとしてDNA二本鎖切断の修復阻害が関与していること、増感効果は癌細胞のp53 statusによらないことを見出した。
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今後の研究の推進方策 |
今後も引き続き、がん細胞のでのアポトーシス抑制に働くシグナル系を阻害することが期待されるフィトケミカルを用いて、in vitro系で放射線増感効果を検討する。現在予定しているのは、NF-KBの活性抑制効果が知られているHerb由来のevodiamine、wogonin、rockglamide等である。また我々は以前からHeat shock protein 90(Hsp90)阻害剤がヒトがん細胞に対して放射線増感効果を引き起こすことを報告してきた。しかし17AAGに代表されるこれらのHsp90阻害剤は、臨床試験で肝毒性があることが明らかになり、より毒性の少ないHsp90阻害剤の開発が行われている。フィトケミカルの中でCelastrol、Withaferin A、Apigeninなどはhsp90阻害効果のあることが明らかにされている。そこでこれらの薬剤のHsp90クライアントタンパクに対する影響を解析し、放射線増感効果について検討する。また実験に使われている培養系である単層培養に比べ、3次元的的に培養された細胞では遺伝子発現等について異なることが報告されている。細胞の3次元培養システムである多細胞スフェロイドについては、われわれは以前より実験系に取り入れてきているが、多細胞スフェロイドはヒト固形腫瘍モデルとしても優れている。多細胞スフェロイド系を使ってフィトケミカルと放射線の併用効果について組織レベル、細胞レベル、分子レベルの観点から解析を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究のゴールは放射線治療、特に放射線抵抗性の腫瘍に対して放射線増感効果のあるフィトケミカルを見出し、その作用メカニズムを検討し、臨床の放射線治療で増感剤として使用できるフィトケミカルを提唱することである。そのため、臨床の腫瘍に近い系で我々の提唱するフィトケミカルと放射線の併用効果について検討することが必要である。次年度はヒト固形腫瘍モデルである多細胞スフェロイド系、およびヒト腫瘍細胞をヌードマウスに移植してxenograftモデルを用いて両者の併用効果について検討する。
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