我々はアメリカがん研究協会が「がんと闘う食べ物」(Foods that fight cancer)としてフィトケミカル(植物が作り出す化学物質)を公表していることに着目し、フィトケミカルの放射線増感効果について検討してきた。一方、増殖系の正常組織に幹細胞が存在するのと同様に、がん組織にもがん幹細胞が存在し、治療後のがんの再発・転移に深く関与していることが明らかになってきた。そこで我々はヒト肝がん細胞(HepG2)とHepG2細胞に繰り返し放射線の継続照射をすることによって得られたがん幹細胞様細胞(HepG2-8960-R)に対して、フィトケミカルおよびHeat shock protein 90(Hsp90)阻害剤の殺細胞効果および放射線増感効果について検討した。その結果、フィトケミカルの一種であるCelastrolはがん細胞の放射線増館効果は有するが、がん幹細胞に対する放射線増感効果は限定的であった。CelastrolはHsp90阻害効果が知られているので、その他のHsp90阻害剤についても検討した。現在、抗がん剤として抗腫瘍効果が検討されているBIIB021、AUY922、PU-H71等のHsp90阻害剤は、HepG2細胞に比べて、がん幹細胞様細胞のHepG2-8960R細胞に対して大きな殺細胞効果が観察された。これらのHsp90阻害剤は放射線増感効果があることも見出されており、がん治療薬として大いに期待できると考えられる。
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