研究課題/領域番号 |
23591846
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
芝本 雄太 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20144719)
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研究分担者 |
杉江 愛生 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師(Lecture) (80509258)
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キーワード | Linear-quadratic model / Reoxygenation / BED |
研究概要 |
当研究はLQモデルとBEDに代わる最適な線量換算モデルを探求することを目的とした。まずEMT6細胞(α/β比3.18Gy)で実験を行った。細胞倍加時間から、人間の腫瘍に対する1週間を当細胞の1日と考え3時間25分間隔が人間の24時間に相当すると仮定した。分割照射は2Gy x 10回を標準とし、α/β値から8.71Gy x 1回、5.78Gy x 2回、4.5Gy x 3回、3.74Gy x 4回、3.23Gy x 5回、2.57Gy x 7回、1.48Gy x 15回、1.19Gy x 20回が2Gy x 10回と等価と考えた。それぞれの分割照射を施行し、コロニー法で求めた生存率を比較した。LQモデルが正しいならば、各分割照射の効果は同じになるはずである。実際の細胞生存率は、7、10、15、20分割群で同程度であったが、5分割以下の群では10分割群の生存率を上回った。この差は分割回数が少ないほど顕著であった。LQモデル換算式を1回照射に適応すると、15-20%の誤差が生じる(1回照射の効果を過大評価する)と考えられた。SCCVIIでも実験を行いほぼ同様の結果が得られたが、HeLa S3においては十分な結論が得られなかった。 MTモデルとRCRモデルは、LQモデル以上に得られたデータにしっかりと適合するものではなかった。ただし線量が高くなると、両モデルともLQモデルより適合性がよかった。新しい換算式については、特に腫瘍に適合するものを提案することは難しいと考えられた。その主因は再酸素化現象の因子を取り入れることが難しいためである。結論としてLQモデルは一回線量がα/β比程度の範囲の分割照射における正常組織反応に用いるべきものであると考えられた。1回大線量照射に用いる際は、LQモデル数式から得られたBEDから、線量に応じて10-20%マイナスして考えることが現実的と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23~25年度中に計画した実験はほぼ試みた。満足な結果が得られない実験もあったが、他の実験で一定の結論が得られている。基礎的検討はもう少し追加し、その後、研究成果の発表を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
基礎実験を完成させるとともに、一連の基礎実験で得られた成果を、臨床の体幹部定位照射のプロトコール策定に応用する。I期肺癌に対する定位照射においては、12.5~13Gy x 4frを基本としてきたが、特にT2症例においては、局所制御が不十分であるため、当研究で得られた結果に基づき、7~7.5Gy x 8frのプロトコールを作成し実行する。数年後に得られた結果を分析し我々の理論の正当性を検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
予定した研究は概ね順調に進んだが、年度内に使い切る必要のある他の研究費も合わせて使用したため、科研費に残額が生じた。残額は次年度に繰り越したい。次年度では、これらを使用して、海外学会発表や論文作成を行うとともに、研究を完成させる予定である。 実験器具、血清・薬品、論文出版費用、コンピューター関連用品、旅費を予定する。
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