研究課題/領域番号 |
23591852
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
磯村 実 島根大学, 医学部, 講師 (40272497)
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研究分担者 |
宮田 敏 公益財団法人がん研究会, ゲノムセンター, 研究員 (60360343)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 遺伝子多型 / 放射線治療 |
研究概要 |
本研究は、乳がん放射線治療における有害事象として照射後に起きるBOOP(閉塞性細気管支炎性器質化肺炎)発症に関連する遺伝子や遺伝子多型を同定し、BOOP発症メカニズムの解明を目指している。本年度の研究では2005年3月から2009年9月まで、がん研有明病院にて乳がん術後放射線治療を受けた患者1225名について、BOOPの発症について調査を行った。その結果、発症した患者は16名(発生頻度1.4%)であった。臨床背景との関連では、年齢との相関を認め、50歳以上で発症頻度が有意に高かった。喫煙歴、各種治療の有無(化学療法、分子標的薬治療、ホルモン療法)とBOOP発症頻度との間には有意差を認めなかった。また、非発症サンプルとして、放射線治療終了後2年を経過しても肺臓炎を発症しない症例から、発症群と年齢がマッチする症例を抽出した。解析の対象とする遺伝子としてKEGGデータベースおいてDNA repairに関連する5個のパスウェイ(hsa03420, hsa03410, hsa03430, hsa03440, hsa04115)に含まれる遺伝子316個を選び、それぞれの遺伝子についてHapMapのデータをもとに、tagSNPの抽出を行った。解析方法については、ロジスティック回帰を基本としたAICによるモデル選択を採用することとしたが、多数の遺伝子多型と患者由来因子の相互作用を解析するには計算量の点で問題が残る。そのため、MDR法あるいはGMDR法を用いて相互作用のスクリーニングを行うこととし、シミュレーションデータによりその有用性を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
解析対象となる症例の抽出と、コントロール症例の抽出は終了した。しかし、DNAサンプルの収集については、倫理委員会で承認され次第開始する予定としており、進捗が遅れている。解析対象遺伝子の絞り込み、解析方法の開発については順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年以降は、がん研究会有明病院放射線治療部にて放射線治療を行う患者を対象として症例の収集を行う。すでに抽出が終わった16症例とあわせ、30症例の収集を行う。加えて、症例の臨床情報や治療情報の収集を行う。収集した情報は匿名化を行い、がん研究所内のデータベースに移動し、以後の解析に用いる。また、対照とするBOOP非発症者サンプルの収集を行う。収集に当たっては非発症者の中からランダムにピックアップする。最終的に200症例の収集を行う
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次年度の研究費の使用計画 |
がん研究会の倫理委員会において本研究計画の承認に時間を要したたため、平成23年度は患者さんからのサンプル収集を開始できず、サンプル収集にかかる費用が未使用となり次年度に繰り越しすることとなった。23年度に計画していたサンプルについては、24年度に収集するサンプルと合わせて収集を行う予定としている。24年度以降の研究費の使用計画は以下の通りである。設備備品費については、必要な設備備品は既に設置されており追加購入の予定はない。消耗品費が主たる経費であり、患者からの血液採取とDNA抽出に用いるディスポーザル実験器具および・保管のための消耗品、加えてSNPタイピングに必要な、試薬類が必要である。SNPタイピングを行う臨床検体数は、合計230サンプルである。旅費については、本研究は基礎研究と臨床研究が複合されたものであるため、基礎医学と臨床医学の最新の研究情報を収集すると共に、国内外の最先端の研究者からのレビューのための旅費が重要となる。謝金の使用予定はない。その他の経費として本研究に関連する論文投稿料を予定している。
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