本研究は、乳がん放射線治療における有害事象として照射後に起きるBOOP(閉塞性細気管支炎性器質化肺炎)発症に関連する遺伝子や 遺伝子多型を同定し、BOOP発症メカニズムの解明を目指している。本研究ではまず2005年3月から2009年9月まで、がん研有明病院に て乳がん術後放射線治療を受けた患者1225名について、BOOPの発症について調査を行った。その結果、発症した患者は16名(発生頻度 1.4%)であった。臨床背景との関連では、年齢との相関を認め、50歳以上で発症頻度が有意に高かった。喫煙歴、各種治療の有無(化 学療法、分子標的薬治療、ホルモン療法)とBOOP発症頻度との間には有意差を認めなかった。また、非発症サンプルとして、放射線治 療終了後2年を経過しても肺臓炎を発症しない症例から、発症群と年齢がマッチする症例を抽出した。次に、解析の対象とする遺伝子を絞り込むために、有害事象として放射線性皮膚炎を示した患者を用いたゲノムワイドSNP解析を行った。Affymetrix社製SNP6.0チップを用いて約100万箇所のSNPのタイピングを行い有害事象の有無との相関をロジスティ ック回帰法を用いて検討した。その結果、p < 1x10e-5を示すSNPが8個、1x10e-4 < p ≦ 1x10-e5のSNPが29個、1x10-3 < p ≦ 1x10-4のSNPを490個同定することができた。これらのSNPが有害事象と関連することが示唆された。
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