研究課題/領域番号 |
23591855
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
仁尾 正記 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70228138)
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研究分担者 |
和田 基 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80372291)
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キーワード | 小腸移植 / 自然免疫 / マクロファージ / 移植免疫 |
研究概要 |
小腸移植の短期成績は向上しているが中長期成績は停滞しており、要因として拒絶反応、虚血再灌流障害、感染等が挙げられる。我々は、これらの問題を解決するには既存の免疫抑制療法だけでは不十分と考え、新たなターゲットとして自然免疫担当細胞であるマクロファージに着目した。これまでもマクロファージと小腸移植に関する動物実験の報告は散見されたが、それらは免疫組織学的手法によって行われていた。我々はフローサイトメトリーを用いることで腸管細胞の多重染色評価と定量的評価をを可能とし、移植後急性拒絶反応時の腸管マクロファージのサブセットとその性質について解析した。 研究は、ラット異所性移植を2群(同系(非拒絶)、異系(拒絶))で施行し、グラフト回腸から細胞を採取した後、フローサイトメトリーを用いて以下について検討した。①代表的ラットマクロファージマーカーのED1、ED2、ED3によるサブセットとその経時的変化の検討。②各サブセットの特徴を検討するため、サイトカイン産生、ケモカインレセプター発現の解析。 これまでの研究実績を総括すると、ラット小腸移植後拒絶反応時にED1、ED2、ED3によって定義される4つのマクロファージサブセットが存在し、なかでもED2+ED3+サブセットは拒絶反応時に増加し、TNF-α産生細胞の割合が有意に高いなど炎症性の性質も有するため、急性拒絶反応と強く関わっていると考えられ、新たな免疫抑制療法のターゲットとなる可能性が示唆された。 本研究成果を2012年3月に開催された第24回日本小腸移植研究会にて報告し、研究奨励賞を受賞した。2013年6月には国際小腸移植シンポジウムでも同成果について報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、マクロファージを制御する薬剤について検討する計画であった。薬剤については、抗CCR2阻害剤、抗TNF-α抗体など、候補については検討されていた。また、腸管マクロファージに発現するω3系脂肪酸レセプターであるGBP-120の免疫制御作用についても検討されていた。 しかし、研究協力者(工藤)が他施設へ出向している期間は研究の進行は遅くなった。7月より同氏が大学には復帰したが、後任の大学院生への直接の引継ぎに時間を要した。 また、実験を行っている建造物の耐震工事により、実験場所の移転を余儀なくされ、実験進行を遷延させる要因となった。
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今後の研究の推進方策 |
研究協力者(工藤)から後任大学院生への技術的な引継ぎもかなり進み、実験施設も安定した。よって今後は、これまでの拒絶反応時の腸管マクロファージの動態変化や特徴に関する結果をもとに、さらなるマクロファージコントロールによる拒絶反応の制御について検討する。 また、GBP-120の免疫制御作用についても検討する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は、マクロファージを実際に制御する薬剤について検討する計画であった。また、腸管マクロファージに発現するω3系脂肪酸レセプターであるGBP-120の免疫制御作用についても検討されていた。 しかし、研究協力者(工藤)が他施設出向期間は研究の進行は遅くなった。7月より同氏が大学には復帰したが、後任の大学院生への直接の引継ぎに時間を要した。また、実験を行っている建造物の耐震工事により、実験場所の移転を余儀なくされ、実験進行を遷延させる要因となった。これらにより、実験が予定通り進まず、次年度使用額が発生した。 これまでの成果をもとに、マクロファージを実際に制御する薬剤について検討する。また、腸管マクロファージに発現するω3系脂肪酸レセプターであるGBP-120の免疫制御作用についても検討する予定である。これらの実験に使用する動物、消耗品、抗体を含めた薬剤の購入などに費用をあてる。次年度は研究最終年度のため(延長申請した)、成果発表としての学会参加、論文投稿に必要な費用なども見込まれる。
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