研究課題
小腸移植の短期成績は向上しているが中長期成績は停滞しており、要因として拒絶反応、虚血再灌流障害、感染等が挙げられる。我々は、これらの問題を解決するには既存の免疫抑制療法だけでは不十分と考え、新たなターゲットとして自然免疫担当細胞であるマクロファージに着目した。これまでもマクロファージと小腸移植に関する動物実験の報告は散見されたが、それらは免疫組織学的手法にて行われていた。我々はフローサイトメトリーを用いることで腸管細胞の多重染色評価と定量的評価を可能とし、移植後急性拒絶反応時の腸管マクロファージのサブセットとその性質について解析した。研究は、ラット異所性小腸移植を2群(同系(非拒絶)、異系(拒絶))で施行した。グラフト回腸から細胞を採取した後、フローサイトメトリーを用いて以下について検討した。①代表的なラットマクロファージマーカーであるED1、ED2、ED3抗体を用いたサブセットとその経時的変化の検討、②各サブセットの特徴(サイトカイン産生、ケモカインレセプター発現)。この研究から、ラット小腸移植後拒絶反応時にED1、ED2、ED3によって定義される4つのマクロファージサブセットが存在し、なかでもED2+ED3+サブセットは拒絶反応時に増加し、TNF-α産生細胞の割合が有意に高いなど、急性拒絶反応と強く関わっていることが示唆され、新たな免疫抑制療法のターゲットになりうると考えられた。本成果は、第24 回日本小腸移植研究会(2012 年3 月、京都)にて発表し、 研究奨励賞を受賞した。さらに我々は、薬剤によるマクロファージの制御についても検討した。単球/マクロファージの分化・増殖を刺激する造血系サイトカインであるマクロファージコロニー刺激因子(CSF-1)に着目し、ラット拒絶反応モデルに投与したところ、拒絶所見が軽減する所見が得られた。
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移植
巻: 49 ページ: 215-223
http://dx.doi.org/10.11386/jst.49.215