研究課題/領域番号 |
23591868
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
江口 晋 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (80404218)
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研究分担者 |
兼松 隆之 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 名誉教授 (40128004)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 再生医療 / 肝臓 / 細胞シート / ヒト / 移植 |
研究概要 |
他の領域(心臓、眼など)に比べて肝臓領域の再生医療は困難を極めており、その発展が待ち望まれている。当科では、肝臓移植に代わる新しい肝再生医療として"細胞シート"に着目し、肝細胞シートによる肝再生医療技術の確立を目指している。平成23年度は、「ヒト初代肝細胞の単離手技の確立」及び「ヒト初代肝細胞シートの開発」を行い、以下の成果を得た。1. ヒト初代肝細胞の単離手技の確立 前灌流液とコラゲナーゼ溶液を用いた二段階灌流法を用い、ヒト肝切除組織の正常部位から肝細胞の単離を行った。本研究では手術により得たヒト肝組織を用いるため、背景、切除部位、手術時間、個人差により、得られた肝細胞の数、生存率、生着性が大きく異なった。切除までの虚血時間が長い場合、毛細血管に塞栓が起こるために灌流溶媒は十分に流れず、得られる肝細胞数は顕著に減少した。また、肝組織内で壊死が起こり、死細胞が増加して生存率が著しく減少した。Percoll溶液を用いて生細胞/死細胞を分離し60%の以上の生細胞を生存率90%以上で安定して回収する手順を確立した。2. ヒト初代肝細胞シートの開発 温度応答性培養皿(UpCell; セルシード社)を利用し、肝細胞のみからなるシートの作製を行った。効率的に肝細胞シートを作製するための細胞密度、培地組成、培養期間等の組み合わせを検討した結果、9.0~14.0 cells/cm2の密度で4日間培養することで肝細胞シートの作製に成功した。細胞密度が低い場合はコンフルエントに達しないために細胞シートの作製が困難であり、その一方で密度が高い場合は良好な生着が見られないロットが存在した。作製した肝細胞シートは、in vitroにおいて肝特異機能発現(ヒトアルブミン分泌活性)を少なくとも4週間維持した。今後は、肝細胞シートの積層化による肝組織再構築及び移植ツールとしての応用が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
肝細胞移植のための新しい手法として細胞シートに着目し、細胞ソースとなるヒト肝細胞の調製と細胞シートの作製に成功した。肝細胞シートの共培養や三次元構築、および移植効果を評価するための初年度として、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究で確立したヒト肝細胞シート作製技術を基盤として、共培養や三次元構築の可能性を探り、より良い移植ツールとしての確立を目指す。最終的には、マウスやブタに移植し、開発した細胞シートの移植効果を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
培養基材、タンパク質・RNA発現解析等の消耗品を中心に研究費を使用する。また、成果を国内外へ発信するための旅費としても一部使用する。
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