研究課題/領域番号 |
23591868
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
江口 晋 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (80404218)
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研究分担者 |
兼松 隆之 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 名誉教授 (40128004)
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キーワード | 再生医療 / 肝臓 / 細胞シート / ヒト / 移植 |
研究概要 |
他の領域(心臓、眼など)に比べて肝臓領域の再生医療は困難を極めており、その発展が待ち望まれている。当科では、肝臓移植に代わる新しい肝再生医療として“細胞シート”に着目し、肝細胞シートによる肝再生医療技術の確立を目指している。 平成24年度は、「1. ヒト株化肝細胞/線維芽細胞複合シートの作製」及び「2. ヒト初代肝細胞/線維芽細胞複合シートの作製」を行い、以下の成果を得た。 1. ヒト株化肝細胞/線維芽細胞複合シートの作製 温度応答性培養皿(UpCell; セルシード社)にヒト皮膚由来線維芽細胞株をコンフルエントにし、ヒト株化肝細胞(HepaRG細胞)を接着させた。HepaRG細胞を播種して培養1日目までに肝細胞シートを作製できる迅速な手法を確立した。また、線維芽細胞が強く収縮することによって自発的な積層化が見られ、ハンドリング性能や肝特異機能発現の向上が見られた。さらに、シート内での細胞の分布の変化を解析し、細胞が活発に遊走していることを明らかにした。 2. ヒト初代肝細胞/線維芽細胞複合シートの作製 上記1と同様の手法を用い、線維芽細胞上にコラゲナーゼ灌流法を用いて調製したヒト初代肝細胞を接着させた。肝細胞シートはハンドリング性能が向上した。細胞分布を観察したところ、ほぼ全ての線維芽細胞が上面に遊走しており、株化肝細胞との挙動の違いを明らかにした。さらに、血管新生因子であるVEGFなどを良好に産生しており、今後の移植において血管誘導された肝組織の構築が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
肝細胞移植のための新しい手法として細胞シートに着目し、本年度は共培養技術を組み合わせた新しい肝細胞シートを創出した。採取・培養が容易な皮膚由来線維芽細胞を用いることによって、迅速な肝細胞シート作製、ハンドリング性能や機能発現の向上を達成した。さらに、血管新生因子を良好に産生しており、今後の移植において血管誘導された肝組織の構築が期待できる。 肝細胞シートを利用した移植効果を評価するための二年目として、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
v 本年度の研究で確立したヒト初代肝細胞/線維芽細胞複合シート作製を基盤として、より良い移植ツールとしての確立を目指す。 1. ヒト初代肝細胞/線維芽細胞複合シートにおける肝特異機能発現評価 2. 肝細胞間、肝細胞-線維芽細胞間の接着に関する微小構造解析 3. 免疫不全マウスへの移植効果の検討 上記を軸に、肝細胞と組み合わせる支持細胞の種類や、培養手法を適宜最適化し、肝再生医療技術の1つとして基盤技術を確立する。
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次年度の研究費の使用計画 |
培養基材、タンパク質・RNA発現解析等の消耗品、移植のための実験動物を中心に研究費を使用する。また、成果を国内外へ発信するための旅費としても一部使用する。
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