研究課題/領域番号 |
23591872
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
鄭 允文 横浜市立大学, 医学部, 助教 (80404995)
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研究分担者 |
谷口 英樹 横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70292555)
武部 貴則 横浜市立大学, 医学部, 助手 (20612625)
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キーワード | 消化器癌 / 癌幹細胞 / CD44バリアント |
研究概要 |
癌幹細胞は腫瘍形成に寄与するだけでなく治療抵抗性を示し、術後の体内における癌幹細胞の残存が再発・転移の原因と考えられている。このことから同細胞群の特性解析は重要であり、癌の根治が望める革新的な治療法へとつながる。大腸癌においては既にCD133等の細胞表面抗原を指標とした癌幹細胞の分離・同定がなされているが、その分離純度は低く癌幹細胞の詳細な特性解析を行うには不十分であると言える。従って本研究では、臨床検体を用いてより高純度な癌幹細胞の分離を目指すとともに、癌幹細胞の存在が示唆された細胞群の特性解析を実施した。まず正常組織幹細胞と癌幹細胞の類似性に着目し、正常大腸上皮における幹細胞マーカーの探索を試みた。その結果、腸管幹細胞が存在する大腸陰窩底部においてCD44の限局的な発現が見られたため、このCD44と既存の癌幹細胞マーカーであるCD133を組み合わせる事で癌幹細胞の分離と特性解析を試みた。フローサイトメトリーにより分画化した各細胞画分の腫瘍形成能を評価した結果、CD133+CD44+細胞において高い腫瘍形成能が示された。また、NOD/SCIDマウス皮下で形成された腫瘍は、原発巣と比較してCD133+CD44+細胞の割合が増加しており、腫瘍再構築の際に重要な役割を担っていることが示唆された。このうち、CD44は1~10までのバリアントアイソフォーム(CD44v1-10)が存在し、癌の遠隔転移に関与していると報告されている。そこで、CD44vの発現と予後との相関を検証した。その結果、CD44v2/3低発現群と比較して高発現群では予後不良であった。このCD44vの詳細な分子メカニズムに関して詳細な報告は存在しないが、癌肝細胞とその微小環境に関与し、細胞外マトリクスやヒアルロン酸との結合などのシグナル伝達を介して、癌肝細胞の未分化性の維持や転移に関与していると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、全359検体を用いてより高純度な癌幹細胞の分離を目指すとともに、癌幹細胞の存在が示唆された細胞群の特性解析を実施している。まず正常組織幹細胞と癌幹細胞の類似性に着目し、正常大腸上皮における幹細胞マーカーを探索した。その結果、腸管幹細胞が存在する大腸陰窩底部においてCD44の限局的な発現が見られたため、このCD44と既存の癌幹細胞マーカーであるCD133を組み合わせる事で癌幹細胞の分離を試みた。大腸癌臨床検体から、細胞表面抗原CD44およびCD133を用いてフローサイトメトリーにより分画化し、得られた各細胞画分をNOD/SCIDマウスに皮下移植する事により腫瘍形成能を評価した。その結果、CD133+CD44+細胞においては僅か100個の細胞から腫瘍が形成され、高い腫瘍形成能が示された。また、NOD/SCIDマウス皮下で作成した腫瘍の解析では、原発巣と比較して優位にCD133+CD44+細胞の割合が増加しており、CD44およびCD133は腫瘍再構築の際に重要な役割を示している可能性が示唆された。CD44のバリアントアイソフォーム(CD44v)の発現は、遠隔転移と関連していることが報告されてきた。しかしながら、大腸癌組織において、その詳細な分子メカニズムは良く分かっていなかった。そこでCD44v2/3の発現量と予後との相関を検討した。その結果、低発現群に比べて明らかに高発現群で予後不良であった。このことからCD44v2/3はより詳細な転移や再発との関連性を検証する事で、大腸癌の予後不良因子として癌原発巣の診断マーカーとして用いることができると考えられる。これらに加え、大腸癌原発巣だけではなく、癌幹細胞が関与していると考えられる大腸癌由来肝転移巣の遺伝子解析を行った。その結果、CD44v2/3および大腸幹細胞マーカーであるLGR5の発現上昇が見られた。
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今後の研究の推進方策 |
ヒト大腸癌幹細胞を維持する微小環境(ニッチ)を対象とした新規抗癌療法の開発を行う。特定された大腸癌幹細胞の遺伝子・蛋白質発現パターンをもとに、癌幹細胞の未分化性維持および細胞周期制御に大きく関わる分子群を特定する。さらに前年度までに得られた結果から、転移など予後不良因子とCD44バリアントアイソフォーム(CD44v)の発現に関連性があると考え、より詳細な解析を行っていく。具体的には、CD44のリガンドであるヒアルロン酸のシグナル伝達が癌幹細胞に与える影響を検証し、CD44の分子メカニズムの解明を試みる。さらにCD44v2/3のバリアントだけではなく、CD44v1-10の発現量と予後との相関を検討する。また、大腸癌幹細胞を標的とした低分子化合物や抗体の開発のため、ヒト大腸癌幹細胞を移植した異種移植モデルを用いてin vivoにおける転移能の検証を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
試薬など消耗品を予定より安価に購入できたため、この助成金残金1555円と翌年度分の合わせて有効に利用する。 本研究において、フローサイトメトリーなどの機器設備はほぼ整っている。しかし、本研究の中心実験である臨床検体を画分化するために使用する免疫染色用とFACS用抗体などの消耗品及び学会発表と論文投稿などが必要となる。
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