研究課題/領域番号 |
23591875
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
篠田 昌宏 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (50286499)
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研究分担者 |
田辺 稔 慶應義塾大学, 医学部, 准教授 (50197513)
高柳 淳 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (80245464)
西山 亮 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (70528322)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 移植・再生医療 / ウィルス / 遺伝子 / バイオリアクター |
研究概要 |
本研究では、国内で2010年より急速に増加している脳死ドナーからの臓器活用拡大を目指し、効果的な肝虚血再灌流障害の治療法を開発する。各種炎症性疾患で治療標的として注目されている核内タンパクHigh mobility group box-1 (以下HMGB1)とその可溶性受容体(sRAGE)に着目し、遺伝子治療、細胞移植、体外循環治療などの特殊技術に絡め、研究・開発を進める。(1)小動物を用いた肝、小腸の虚血・再灌流障害モデル、さらには移植モデルにおいて、a) sRAGEの遺伝子導入療法、b) sRAGE産生性肝細胞の細胞移植、c) sRAGE産生性肝細胞内臓リアクターを用いた体外循環治療等の障害改善効果の検討、(2)さらにsRAGE関連治療の臨床応用を念頭に、生体・脳死の肝・小腸移植レシピエントにおける、HMGB1、sRAGE動態の検討を目標として研究を開始した。次に平成23年度の実施計画につき評価する。HMGB1 A box cDNAを発現するアデノウィルスベクターついては、COS-TPC 法を用いて、sRAGE cDNA を組み込んだ組換えアデノウィルス(Adex-sRAGE)を作製中である。本研究においてはAdex-sRAGEを大量に必要とするため、現在Adex-sRAGEの大量産生を試みている段階である。sRAGE産生性肝細胞の作製と体外循環型リアクターへの埋め込みについては準備をすすめている段階である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、効果的な肝虚血再灌流障害の治療法を開発するべく、HMGB1とsRAGEに着目し、各種実験を計画した。現在、遺伝子治療、細胞移植、体外循環治療などにつき準備を進めている段階である。当グループはAdex-Aboxにて同様の研究を並行して実施しており、すでに結果を残している。sRAGEが大量生産できれば本研究を順調に遂行できると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
I(A)ラット部分肝虚血モデルにおいて、虚血24時間前にAdex-sRAGEを門脈内に投与し、経時的に各種パラメータを検討する。(B)ラット小腸虚血モデルにおいて,虚血24時間前にAdex-sRAGEを門脈内に投与し、各種パラメータを比較検討する。(C)前述のモデルにおいて、門脈あるいは脾臓内にsRAGE産生性肝細胞を虚血24時間前に注入し、再灌流後同様のパラメータを測定し評価する。(D)前述と同様のモデルにおいて、再灌流と同時にsRAGE産生リアクターを接続、灌流を行う。虚血再灌流障害の抑制効果を、同様のパラメータを測定し評価する。II.ラット肝移植モデル、ラット小腸移植モデルにおいて、温冷虚血を実施し、次のsRAGE関連strategyの効果の検討をする。ラット肝移植モデルにおいてはi) 移植24時間前にAdex-sRAGEをドナー門脈内に投与、ii) 移植24時間前にsRAGE産生性肝細胞をレシピエント脾臓内に投与、iii) 再灌流と同時にレシピエントにsRAGE産生リアクターを接続し灌流を行う。ラット小腸移植モデルにおいては、iv) 移植24時間前にAdex-sRAGEをレシピエント門脈内に投与、v) 移植24時間前にsRAGE産生性肝細胞をレシピエント脾臓内に投与、vi) 再灌流と同時にレシピエントにsRAGE産生リアクターを接続し灌流を行う。IIIブタ肝移植モデル、小腸移植モデルにおけるsRAGE遺伝子導入効果の検討を行う。ドナーをKCl 静注にて心停止させ,阻血した後肝全摘または回腸40cmを摘出、冷保存し,レシピエントに移植する。肝移植ではグラフト摘出時にグラフト門脈内に、小腸移植では移植24時間前にレシピエント門脈内にAdex-sRAGEを投与する。IV倫理委員会申請の上、生体、脳死移植患者におけるHMGB1、sRAGE動態の検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該研究費としては、本研究をするにあたって実験補助員が必要であり、その謝金を要した。物品費に関しては当研究室所有の物品を使用したため、当該年度の使用額は予想以下であり、また、旅費に関しても、当該研究費から使用しなかったため、繰越額が生じた。次年度研究費としては、本研究に必要な物品費、国内外の学会発表のための旅費、Adex-sRAGE大量生産するにあたって実験助手を必要としておりその謝金、共同研究者との通信費などが必要であると考えられる。
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