研究課題
本研究では、国内で2010年より急速に増加している脳死ドナーからの臓器活用拡大を目指し、効果的な肝虚血再灌流障害の治療法開発を目指した。各種炎症性疾患で治療標的として注目されている核内タンパクHigh mobility group box-1 (以下HMGB1)とその可溶性受容体(sRAGE)に着目し、遺伝子治療、細胞移植、体外循環治療などの特殊技術に絡め、研究・開発を進めた。HMGB1は敗血症などの病態で新たな炎症メディエーターとして注目されている。平常時にはDNAの構築や維持の役割を果たしているが、組織障害が生じると、壊死した細胞からHMGB1が放出され、このHMGB1が免疫細胞のRAGEやTLRを通して炎症シグナルが伝達されていく。本研究では平成25年度までにHMGB1 Aboxを発現するウイルスベクターを作成していた。HMGB1 AboxはHMGB1を構成するタンパク質の一部であるが、このHMGB1 Aboxが大量に存在するとHMGB1に代わり膜受容体と結合し、HMGB1の受容体への結合を阻害することで炎症を抑制すると考えられた。このHMGB1 Aboxを発現するウイルスベクターをラットの門脈に投与し、投与後72時間で肝臓においてAboxタンパクが発現することを確認した。そこで、ラットの薬剤誘導性急性肝不全モデルを作成し、肝不全発現の72時間前にラット門脈にウイルスベクターを導入した。ウイルスベクター導入群は非導入群と比較して、肝機能、炎症性サイトカイン、予後が改善することを示した。
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