研究課題/領域番号 |
23591876
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
田中 和生 昭和大学, 医学部, 教授 (50236569)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | サイトメガロウイルス |
研究概要 |
○試験管内実験系:1.M1細胞(MΦ前駆体)、Mm1細胞 (MΦ)の表面抗原調べた。その結果、Mm1ではM1に比べCD11b、F4/80の発現が増強しており、Mm1がより分化していることを確認した。2.マウスサイトメガロウイルス(MCMV)潜伏感染から再活性化し、MCMV-IEが発現すると細胞が緑色を発色するGreen Fluorescent Protein (GFP)標識MCMVをM1細胞、Mm1細胞に感染させた。しかし、M1、Mm1のいずれにおいてもMCMV再活性化は認められなかった。3.しかし、上記2の実験系において培養細胞に脱アセチル化阻害剤であるトリコスタチンAを添加したところ、Mm1細胞では発色が認められたが、M1細胞では認められなかった。即ちヒストンが非アセチル化している状態ではmajor IE promoter/enhancer (MIEP) が働かないが、トリコスタチンAの作用でアセチル化するとMIEPが活性化し、MCMVが再活性化することを確認した。 即ち、MCMV再活性化には感染細胞のヒストンのアセチル化が重要であることを観察した。○動物実験系BALB/c雌マウスにMCMVを感染させ、これにEL4(C57BL/6由来細胞株)を接種する動物実験系について、EL-4接種量などの予備実験を行った。○ 臨床例(妊婦)における検討本研究の目的はCMVの再活性化は免疫抑制によるものではなくallogeneic stimuliによることを明らかにすることである。そこで、免疫抑制を伴わないアロ刺激の臨床例として妊婦に注目した。その結果出産直後の女性の母乳を採取したところ高率(11例中7例)に母乳中に再活性化ヒトCMV(HCMV)が存在することを観察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
○試験管内実験系(達成度:60%)1.M1細胞(MΦ前駆体)、Mm1細胞 (MΦ)を用いた実験結果からMCMV再活性化には免疫抑制ではなく、感染細胞のヒストンのアセチル化が重要であることを観察した。またMΦの分化のマーカーとしてCD11b、F4/80が利用できることを明らかにした。この結果は次年度の動物実験系にも応用可能である。2.MCMV潜伏感染M1細胞(BALB/c由来)とEL4(C57BL/6由来)を共培養し、潜伏感染ウイルスの再活性化を調べる実験は平成24年度に動物実験と平行して行う。○ 動物実験系(達成度:15%)1.EL4細胞の取り扱いに関する予備を行った○臨床例(妊婦)における検討(当初の実験計画にはなし)本研究と別のプロジェクトとして低出生体重児にみられる新生児CMV感染症の感染経路を調べていた。その結果、母親の母乳に再活性化ヒトCMV(HCMV)が存在することを示した。この結果は本研究の目的であるCMVの再活性化は免疫抑制によるものではなくallogeneic stimuliによることを示しているものと考えている。当初の実験計画ではマウスレベルでの in vivo allo stimuli としてはBALB/cマウスにEL4細胞を接種する系のみ予定していたが、MCMV潜伏感染BALB/c雌マウスとC57BL/6雄マウスの交配実験も追加したい。
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今後の研究の推進方策 |
1.マウスにMCMVを感染させ、MΦ系細胞でのMCMVの感染形態(潜伏感染、再活性化)を調べる。MΦ系細胞よりDNAとRNAを抽出後、PCRおよびRT-PCR法を用いて、ウイルスDNAの存在を確認し、潜伏状態では発現しないウイルス遺伝子(IE1)のmRNAの有無を確認する。また最初期発現期遺伝子であるIIE3、初期発現遺伝子M54(DNAポリメラーゼ)、M55(グリコプロテインB)、後期発現遺伝子M115(グリコプロテインL)のmRNA発現をRT-PCR法を用いて比較する。2.マウスにMCMVを感染させ、さらにEL4(C57BL/6由来)を接種しMΦ系細胞よりDNAとRNAを抽出後、PCRおよびRTPCR法を用いて、ウイルスDNAの存在を確認し、潜伏状態では発現しないウイルス遺伝子(IE1)のmRNAの有無を確認する。また最初期発現期遺伝子であるIIE3、初期発現遺伝子M54(DNAポリメラーゼ)、M55(グリコプロテインB)、後期発現遺伝子M115(グリコプロテインL)のmRNA発現をRT-PCR法を用いて比較する。3.妊婦ではヒトCMVの再活性化が高率に認められることが報告され、CMV活性化に胎児由来のアロ抗原が関与していることが報告されている(Meier et al. J.Clin.Microbiol. Vol.13, p.1318, 2005)。そこで、6週齢の♀BALB/cマウスにMCMVを感染させ、感染4-8週後に♂C57BL/6マウスと交配させる。妊娠マウスの各臓器(含乳腺組織)を摘出し、MCMV感染の有無を調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品:RT-PCR関連試薬、マウス、マウス飼料(90万円)旅費:本研究成果を平成24年10月29日~11月2日に米国カリフォルニア州サンフランシスコで行われる国際サイトメガロウイルス学会(CMV2012、旅費、宿泊費、参加費:25万)および11月13日~15日に大阪で行われる第60回日本ウイルス学会(旅費、宿泊費、参加費:5万)で発表予定。
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