研究概要 |
○ 臨床例(妊婦)における検討 本研究の目的はCMVの再活性化は免疫抑制によるものではないことを明らかにすることである。平成23年度の研究で免疫抑制を伴わないアロ刺激の臨床例として妊婦に注目した。その結果出産直後の女性の母乳を採取したところ高率(11例中7例)に母乳中に再活性化ヒトCMV(HCMV)が存在することを観察した。出産後2週目より母乳中にHCMVが検出される事を観察し、この臨床研究からCMV再活性化のモデルとして妊娠、出産のモデルが使えるのではないかと考えた。 ○ 動物実験系〈実験系〉BALB/c♀マウス7週齢の腹腔内にマウスサイトメガロウイルス(MCMV、Smith株)を感染させた(1500pfu/マウス)。感染4週後には唾液腺、乳腺、脾臓、肺には感染性ウイルスは存在しておらず潜伏感染が成立していることを確認した。このMCMV感染4週マウスにBALB/c♂及びC57BL/6♂を交配した。 〈結果〉BALB/c♂マウスと交配させた群(n=10)では出産5,10,15日のいずれの母乳から8,000-20,000コピー/mlのMCMVが検出された。同様に出産後の尿中にもMCMVの排出が認められた。さらに仔マウスは立毛、運動低下などのMCMV感染の症状が認められた。以上より妊娠により母マウスにおいてMCMVが再活性化することが明らかとなった。一方、C57BL/6♂マウスと交配させた群でも出産5,10,15日のいずれの母乳からMCMVが検出されたがウイルス価は6,000-15,000コピー/mlとBALB/c♂マウスと交配させた群と比較し、ウイルス価は有意に低値を示していた。また尿中へのMCMV排出は認められなかった。〈結論〉妊娠、出産に伴う変化によりMCMVが再活性化することが明らかになった。即ち、CMV再活性化には免疫抑制やアロ抗原刺激が関与していないことが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
MCMV感染♀マウスを妊娠、出産させると母乳中に感染性MCMVが出現する系を用いて以下の検討を行う。 (1)再活性化する細胞を同定する:In situ PCR法を用いて乳腺の中でCMVが再活性する細胞を同定する。MCMVのIn situ PCRによる検出に関する実験手技は平成24年度に既に習得済みである(浜松医科大学病理学供出に出張し、習得)。 (2)非妊娠期、妊娠中期、妊娠後期、授乳期のマウス乳腺を採取し、RNA-PCRにてMCMV-major IE promoter/enhancer (MCMV-MIEP)、およびtranscriptional activator (NF-κB, API, CREB)のmRNAの発現を調べ、細胞活性化とMCMV再活性化との関係を明らかにする。
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