研究課題/領域番号 |
23591889
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
原 尚人 筑波大学, 医学医療系, 教授 (80189688)
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研究分担者 |
竹越 一博 筑波大学, 医学医療系, 教授 (40261804)
石井 清朗 筑波大学, 医学医療系, 助教 (80419150)
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キーワード | 褐色細胞腫 / mTOR |
研究概要 |
本研究では悪性褐色細胞腫の発症機序及び新しい治療薬である分子標的薬の作用機序について検討することを目標として研究を行っている。褐色細胞腫の原因遺伝子として最近発見されたTMEM127はmTORの活性を負に制御している遺伝子であり、本邦からの2症例が報告されている(Takeichi N et al. Clinical Endocrinology in press)。同遺伝子の変異例ではmTOR阻害薬投与の効果が期待できる。まずラット褐色細胞腫cell line PC12をmTOR阻害薬であるEverolimusで処理し、その効果を検討した。Everolimus 12時間刺激後の変化をウェスタンブロッティングにより検出した結果、mTORおよびその下流のS6K1と4EBPが抑制されていた。抗増殖効果の可能性が示唆された。またELISA法ではアポトーシスの亢進が認められた。 mTOR阻害薬はオートファジーの活性を誘導する薬剤としても注目されている。PC12をEverolimusで24時間刺激するとオートファジーに関連するLC3-IIの増強が認められた。mTOR阻害薬と同様にSunitinibを用いてもLC3-IIの増強を認めた。オートファジーは腫瘍の増殖に重要な働きをしていると考えられている。しかし、オートファジーが腫瘍の増殖を抑制する働きをしているという報告がある一方、特定の環境下においては腫瘍細胞を保護するような働きを示すという報告も認めるのが現状である。そこでAtg13のノックダウンやオートファジーを抑制する薬剤(塩化アンモニウム)を使用しスニチニブによる作用を検討したところ、アポトーシスや細胞増殖抑制効果が亢進することが示された。つまり、PC12においてはオートファジーの抑制によってスニチニブに対する薬剤感受性が高まる可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Sunitinibの研究においては血管新生のみならず腫瘍細胞自身にもアポトーシスを誘導することによる抗腫瘍効果と、カテコールアミン合成低下作用を示す可能性があることを報告した(Am J Physiol Endocrinol Metab. 2011 Aug 30.)。 またSunitinibによるオートファジーの亢進が認められたことに関連して、オートファジーの抑制剤やAtg13のノックダウンにより、Sunitinibによる抗腫瘍効果が増強するという結果を報告した(J Pharmacol Sci. 2012 Nov 21)。
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今後の研究の推進方策 |
Everolimusによるアポトーシス亢進と増殖抑制効果を認め、mTORC1およびmTORC2の阻害薬による検討でもその効果を確認したが、さらにmTORC2の一部であるRictorのsiRNAによるノックダウンによりEverolimusの効果を検討し、その作用機序の検討を行う予定である。 Sunitinibの研究において示唆されたS6Kの抑制とアポトーシス亢進の関連の研究をさらに進めて、S6Kの強発現とsiRNAによるノックダウンにより検討を重ねてゆく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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