研究課題/領域番号 |
23591894
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
大西 秀哉 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30553276)
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研究分担者 |
片野 光男 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10145203)
中野 賢二 九州大学, 先端融合医療レドックスナビ研究拠点, 教授 (00315061)
中村 勝也 九州大学, 大学病院, 助教 (60585743)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 制御性T細胞 / VEGFR2 / FOXP3 / 大腸がん / 予後予測因子 / VEGF |
研究概要 |
制御性T細胞(Regulatory T cells:Treg細胞)は、様々な病態に対する新規治療標的として注目されている。本研究は、Treg細胞の一部にVascular endothelial growth factor receptor-2 (VEGFR2)が高い特異性を持って発現しているという発見(Suzuki, Onishi, Morisaki et al. Eur J Immunol 2010)に基づき、VEGFR2を標的としたTreg細胞制御療法を開発することを目的とした研究である。本年度は、VEGFR2の諸組織における発現解析(治療標的としての特異性および安全性の確認)および、VEGFR2のTreg細胞における機能的意義の解析(治療対象となりうる標的機能同定)を行う計画であった。以下、本年度に得られた新たな成果を記述する。VEGFR2+FOXP3+Treg細胞の生体内での分布では、VEGFR2+FOXP3+Treg細胞は大腸がん組織、転移リンパ節、PBMC、がん性胸腹水および胸腺に、Treg細胞中の約50%から75%の頻度で認められることを確認した。次にVEGFR2+FOXP3+Treg細胞の臨床的意義解析の目的で、大腸がん治癒切除症例における腫瘍局所VEGFR2+Treg細胞数と予後との関連解析を行った。その結果、大腸がん組織局所のFOXP3+Treg細胞数は、大腸がん患者の予後予測因子とはなり得なかったが、大腸がん組織局所のVEGFR2+FOXP3+Treg細胞数は、リンパ節転移や病期といった病理学的因子とは相関を示さないにも関わらず、無病生存期間および全生存期間の独立した予後予測因子であるという結果を得ている(現在論文再投稿準備中)。このことは、VEGFR2+FOXP3+Treg細胞が治療標的細胞となり得ることを強く示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大腸がん組織におけるVEGFR2+FOXP3+Treg細胞同定のため、VEGFR2の蛋白レベルでの発現を我々の開発した半定量的蛍光免疫染色法(Kai, Onishi et al. Cancer sci 2011)を応用して行った。具体的には、大腸がん組織に浸潤するCD4陽性細胞をVEGFR2、FOXP3およびDAPIで染色を行い、細胞の腸軸方向の蛍光強度をscanして蛋白の発現を半定量的に解析する方法である。その結果、蛍光免疫染色法でVEGFR2+FOXP3+Treg細胞が首尾よく同定でき、結果が得られたものと考えられる。しかし、患者の予後調査に時間がかかり、予想以上には進行しなかった。
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今後の研究の推進方策 |
VEGFR2+ Treg細胞制御法の開発を行う。具体的には、1、既存の薬剤による制御既存の抗癌剤、抗体、シグナル経路阻害剤のVEGFR2+ Treg細胞の増殖に及ぼす影響を末梢血VEGFR2+ Treg細胞を標的とし、FACS解析にて網羅的に解析し、増殖抑制に関与する薬剤を検出する。2、抗VEGFR2抗体の作成VEGFR2のペプチド配列に基づいて種々の合成VEGFR2ペプチドを設計し、VEGFR2と特異的に反応する抗VEGFR2抗体を作成する。本VEGFR2抗体を用いて1) VEGFR2+ Treg細胞の高純度の回収2)増殖を初めとする諸機能への影響、および3)抗体依存性細胞介在性障害試験(ADCC)によるVEGFR2+ Treg細胞の選択的除去の可能性を検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
VEGFR2関連ペプチド合成関連として300千円、VEGFR2抗体作製関連として300千円、細胞機能解析関連として200千円、Cell sorter関連として200千円、および研究成果投稿料として100千円を使用する予定である。
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