研究課題/領域番号 |
23591905
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
瀧藤 克也 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (00254540)
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研究分担者 |
松田 健司 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (30398458)
堀田 司 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (50244744)
山上 裕機 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (20191190)
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キーワード | 膜リン脂質脂肪酸構成 / 好中球機能 / 肝硬変 |
研究概要 |
消化器外科、特に肝硬変・肝機能障害時の周術期管理に際しては、術後感染症の発症に伴い肝機能のさらなる悪化などから多臓器不全に陥り、その管理に難渋し、不幸な転機をとることも少なくない。本研究では、ヒト末梢血の好中球の細胞膜リン脂質を構成する脂肪酸が好中球機能におよぼす影響に着目し、肝硬変肝機能障害時の周術期の好中球膜リン脂質脂肪酸構成を肝機能障害のない症例の術後経過と対比して、肝機能障害時の特徴を明らかにすることを目的として研究を進めている。 健常人の好中球リン脂質構成脂肪酸を調べた結果、オレイン酸やアラキドン酸などPLDを活性化する不飽和脂肪酸が血清中の総脂質脂肪酸比率に比べ多く含まれており、 好中球では外界からの刺激に対してリン脂質をシグナル供給源とした速やかな活性酸素産生活性化機構が備わっていることを再確認した。実際に消化器癌の手術を受けた患者での好中球のリン脂質構成脂肪酸の術後変動では、術後1日で好中球のリン脂質を構成する脂肪酸のうちアラキドン酸とEPAが大きく減少し、経過とともに術前値に復する傾向を認めた。術後7日目でのアラキドン酸値が術前値に復した場合は好中球の貪食能が改善し、アラキドン酸が低値のままの場合は好中球貪食能が回復しない傾向を示し、好中球の膜リン脂質構成脂肪酸の変動が好中球機能に影響することを確認した。今後、術前の肝機能低下による好中球の膜リン脂質中の構成脂肪酸の変動の特徴を症例を増やし既存のデータと比較して明らかにし、その術後経過と比較検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在、好中球から膜リン脂質を分離し、その構成脂肪酸の測定を行っているが、測定法の確立が遅れ、肝機能障害症例の数がまだ予定まで達していない。可能な限り症例数を増やして好中球の膜リン脂質構成脂肪酸の変動の特徴を明らかにしていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
本年も引き続き、肝機能障害時の周術期の好中球の膜リン脂質構成脂肪酸を測定すると同時に、現在までに得られたデータを既存のデータと比較して、肝機能障害の程度による好中球の膜リン脂質構成脂肪酸の変動の特徴を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度も引き続き肝硬変肝機能障害時の周術期の好中球の膜リン脂質構成脂肪酸の変動を測定し、好中球機能や術後経過に及ぼす影響を検討するために、ヒト末梢血好中球の分離、好中球総脂質の抽出、さらには総脂質中リン脂質の分取、およびリン脂質中の脂肪酸の測定のための試薬に研究費を使用する予定である。さらに、予定症例数の達成が困難な場合でも、既存のデータと比較検討するためのデータ整理、発表のための旅費などに使用する予定である。
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