研究課題
上皮間葉転換 (EMT)や幹細胞の存在は乳癌の進展や転移・治療抵抗性を考えていく上で非常に重要である。乳癌においてはCD44+ CD24-/low細胞集団は自己複製能を持つ癌幹細胞を多く含む分画であり、これら幹細胞様集団の生成とEMTには密接な関連があることが知られている。またmiR141、200cなどのmicroRNAsはTGFb2やEMT誘導因子ZEB1の発現を制御し、EMTや幹細胞性維持のメカニズムに重要な役割を演じている。一方、BTG2はBTG/Tob蛋白質ファミリーの一員で、乳腺上皮細胞に高発現している。BTG2発現は正常乳腺組織と比べて乳癌において著しく低下しており、このBTG2発現低下は乳癌の病理学的分化度やサイズと有意に相関があることも報告されている。我々は本研究においてShRNAによるBTG2遺伝子Knockdownはヒト乳腺上皮細胞であるMCF10AやHMECにおいて、EMT発症に密接な関連のあるmiR141やmiR200cなどのmicroRNAs発現をほぼ完全に抑制し、TGFb2発現上昇やSmad2リン酸化などTGFb pathwayを活性化させてEMTを惹起すること、また幹細胞様能力を持つCD44+ CD24-/low細胞集団分画を顕著に増加させることを見出した。またBTG2遺伝子KnockdownはHER2/HER3の活性化やAKT pathwayの活性化を誘導した。In vivoにおいてもH-Ras v12遺伝子を導入したMCF10A細胞のマウス乳腺への同所移植において、BTG2 Knockdownは肺・肝臓・骨髄への遠隔転移を著明に促進し、これらはHER2陽性の乳癌患者で効果が高いことが知られている分子標的治療薬Lapatinibの投与により著明に抑制された。さらに我々はBTG2 knockdownによって惹起されたEMTは、miR200cやBTG2のRestorationによってReverseされることも確認した。これらの結果は、BTG2発現の低下は乳癌の悪性化、転移に関与しており、BTG2発現の低下している乳癌患者の治療にmiR200cやBTG2遺伝子のRestorationが有効である可能性を強く示唆している。
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