研究課題/領域番号 |
23591916
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研究機関 | 群馬県衛生環境研究所 |
研究代表者 |
村田 直哉 群馬県衛生環境研究所, その他部局等, 研究員 (00533473)
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研究分担者 |
岡島 史和 群馬大学, 生体調節研究所, 教授 (30142748)
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キーワード | 実験外科学 |
研究概要 |
内視鏡を用いた外科手術時の二酸化炭素気腹は炎症性サイトカイン産生を積極的に抑制する。本研究では二酸化炭素気腹時に予想される細胞外pH低下がプロトン感知性G蛋白共役受容体(GPCR)へ関与することを実証し、その細胞内シグナル伝達機構を明らかにすることをめざした。その結果、(1)リポポリサッカライド(LPS)をマウス腹腔内に投与すると、TNF-αやインターロイキン6(IL-6)などの炎症性サイトカイン産生が亢進し、LPSの投与量が多くなると多臓器不全によって死亡する。TDAG8欠損マウスへのLPS投与は野生型マウスに比較して高炎症性サイトカインの傾向があった。例数をふやしたが、その傾向はあるものの、優位差にはいたらなかった。現在、同じ観点から、GPR4欠損マウスでも解析している。(2)マウスマクロファージをLPS(TLR4アゴニスト)あるいはpolyinosinic-polycytidic acid (poly (I:C))(TLR-3アゴニスト)で処理するとTNF-α、IL-6などの炎症性サイトカインを産生する。この応答は細胞外pHが低下すると抑制される。このpH低下による応答抑制はmRNAレベルでも確認されている。そこで、TDAG8欠損マウス由来のマウスマクロファージで同様の実験をおこなったところ、著明な減弱が観察された。しかし、pH低下による効果はすべてTDAG8欠損で消失することはなく、TDAG8非依存性の作用の存在が示唆された。(3)マクロファージではTDAG8に加え、OGR1、G2Aが著明に発現している。そのためOGR1欠損マウス由来のマクロファージ、G2AをsiRNAでノックダウン細胞させた細胞でも解析したが、OGR1ノックアウト、G2Aノックダウンの効果は観察されなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
受容体欠損マウスを用いて、TDAG8が実際に炎症性サイトカイン産生に対して抑制的に機能している可能性が示唆された。一方、細胞レベルの実験によって産生抑制に対するTDAG8の重要性が証明された。
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今後の研究の推進方策 |
インビボ実験で重要な結果がえられたので、さらに精力的に解析する。今後はTDAG8の作用機構に関して、cAMPやプロテインキナーゼAの関与、またトールライク受容体シグナル系のどの経路を抑制しているのかなどを中心に解析する。平成24年度にはマウスを用いたインビボ実験や細胞レベルの実験に多少手間取ったことから、実験の進捗が遅れ研究費の繰越しが生じたが、今後は順調に実験を行えるものと考えている。したがって、特に大きな計画の変更は考えていない。
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次年度の研究費の使用計画 |
マウスマクロファージをLPS(TLR4アゴニスト)で処理するとTNF-α、IL-6などの炎症性サイトカインが産生する。この応答は細胞外pHが低下すると抑制される。このpH低下による応答抑制はmRNAレベルでも確認されている。そこで、TDAG8欠損マウス由来のマウスマクロファージで同様の実験をおこなったところ、著明な減弱が観察された。(1)TDAG8の作用機構の解析:TDAG8は通常、Gs/cAMP系に連関していることが知られている。実際、TDAG8受容体刺激ではcAMPが上昇すること、また、cAMPを上昇させるプロスタグランジンやβ-アドレナリンアゴニスト、cAMP誘導体がLPSによるサイトカイン産生を抑制する。そこで、マクロファージでもGs/cAMP経路を介してサイトカイン産生抑制を誘導していると推定している。そこで、Gsに対するsiRNA、A キナーゼ阻害薬であるH89などを用い、pH応答が抑制されることを確認する。(2)トールライク受容体系における抑制部位の解析:トールライク受容体TLR4、TLR3受容体刺激による炎症性サイトカインの産生にはNF-kB、AP-1などの転写因子が関与している。TDAG8/cAMP系はこれらの転写因子の活性化経路を抑制していると推定している。そこで、これらの転写因子の活性化の上流のシグナル系であるIk-Bのリン酸化、プロテオリシスによる蛋白分解、ERKリン酸化、p38MAPキナーゼのリン酸化などをウェスタンブロッティング法で追跡する。これらの活性に対する細胞外pH効果、受容体欠損の効果より、トールライク受容体カスケードのどの部位でcAMPシグナルが抑制的に作用しているかを判定する。
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