研究課題
【背景】我々は食道扁平上皮癌において低親和性神経成長因子受容体(p75NTR)が幹細胞様形質をもつ細胞で発現していることを報告してきた。さらにマイクロアレイを用いた網羅的解析により食道癌幹細胞の分化に関わる可能性のあるmicroRNAとしてmiR-203を同定した。【目的】miR-203を標的とした食道扁平上皮癌分化誘導療法の可能性を検討する。【方法】食道癌細胞株(KYSE)にmiR-203強制発現ベクターを導入し安定発現株を作成し分子生物学的機能解析を行った。【結果】mir203安定発現株において多くの細胞が膨化し増殖が抑制された。RT-PCRの結果、角化マーカーであるインボルクリンの発現が著明に亢進していた。FACSおよびRT-PCRの結果、p75NTR、p63およびBmi1の発現に変化を認めなかった。ヌードマウス皮下への移植によってmir203発現株においてMock株と比べて形成された腫瘍径が有意に小さく、組織学的に極性を示しつつ遠心性に分化する傾向を示した。免疫染色にてKi67陽性細胞およびp63発現細胞が少数、腫瘍中心部に位置し、その外側に位置する細胞ででインボルクリンの発現を認めた。【結語】食道扁平上皮癌においてmiR-203が幹細胞から角化細胞への分化と極性の回復を促進しているものと考えられ、分化誘導療法の標的となる可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
食道癌細胞株を用いてのALDEFLUORによるALDH-1/p75NTR陽性細胞の分離に技術的な困難を生じたため、FFPEブロックからのRNA抽出を行い、幹細胞特異的microRNA候補を探索した。その後セルソーターを用いてp75NTR陽性細胞の分離に進んだが一時的に技術的な困難を生じた。
miRNAの標的分子を同定し機能解析を行う。既に解析を進めているmiR-203についてその標的分子をTarget Predictionにて検索しRT-PCR,免疫染色、レポーターアッセイなどを用いて検討する。新規miRNAについて機能解析を進める。
該当なし
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Anticancer Res
巻: 33 ページ: 175-181
巻: 32 ページ: 5507-5514