研究課題
臨床病期2または3食道扁平上皮癌症例20例についてmiR-203の発現をマイクロアレイを用いて検出したところ、切除組織20例中7例においてmiR-203発現が癌部で正常部の2倍以上に亢進していた。高/低発現群において腫瘍の部位、組織型、腫瘍進達度、リンパ節転移、遠隔転移および臨床病期に有意差を認めず、低発現群において有意に予後不良であった(p=0.01)。つぎに食道癌細胞株(KYSE)にmiR-203強制発現ベクターを導入し安定発現株を作成し分子生物学的機能解析を行ったところ、mir203安定発現株において細胞増殖が有意に抑制された。RT-PCRの結果、角化マーカーであるインボルクリンの発現が著明に亢進していたが、幹細胞関連分子p63およびBmi1の発現に変化を認めなかった。Cell Sorter を用いて幹細胞マーカーp75NTR陽性および陰性細胞を分離したところp75NTR陰性細胞においてインボルクリンの発現が亢進していたがp63およびBmi1の発現に有意差を認めなかった。ヌードマウス皮下への移植によってMock株と比べてmir203発現株において腫瘍形成が有意に抑制され、組織学的に極性を示しつつ角化上皮に分化する傾向を示した。免疫染色にてKi67およびp63陽性細胞が基底部に位置し、その外側でインボルクリンの発現を認めた。Bmi-1は腫瘍全体に発現していた。これらより食道扁平上皮癌においてmiR-203は角化扁平上皮への分化を促進しており、その発現低下により予後不良となる可能性が示唆された。
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