研究課題/領域番号 |
23591921
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
安本 和生 金沢大学, がん進展制御研究所, 准教授 (90262592)
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キーワード | MET/HGF / 癌性腹膜炎 / 胃癌 / MET TKI / パラクリン経路 |
研究概要 |
胃癌診療の中で、その予後を最も左右する癌性腹膜炎の成因は不明であり今なお効果的な治療法がない。本研究では、高度な間質増生を伴うスキルス胃癌が高頻度に癌性腹膜炎を発症するという重要な臨床知見を踏まえ、癌の微小環境の新たな視点に基づく解析(癌間質誘導性Hepatocyte Growth Factor (HGF)を主な標的として上記2つの機序(CXCR4/CXCL12 axisならびにEGFR/EGFR ligands axis)との相互促進作用の詳細な検討)から、真の胃癌標的治療法の確立を目指す。 今年度は、胃癌におけるHGFの関与やその産生細胞ならびに産生誘導機序(オートクリン・パラクリン機序など)をヒト胃癌細胞株・初代培養線維芽細胞ならびに臨床検体(癌性腹膜炎を発症した胃癌原発巣や癌性腹水)を用いて検討した。 興味深いことに、オートクリン機序による胃癌細胞からのHGF産生については、in vitroでwestern blot analysisや培養上清を用いたELISA試験ならびに病理免疫組織学的検討においていずれも認められず、腫瘍間質を構成する線維芽細胞より大量に産生されることが判明した(パラクリン経路)、とくにがん性腹水で1.4 ng/mLと非がん性腹水に比して2倍以上の高い濃度で存在することが判明した。さらに、マウスを用いた検討で、MET増幅を有する細胞株は腹膜播種のみを形成し、HGFによって増殖誘導のおこるスキルス胃癌由来の胃癌細胞株のみが悪性腹水を有する腹膜播種(癌性腹膜炎)を形成できることを明らかにした。 MET TKIは、癌性腹膜炎形成後からの治療開始においても十分な抗腫瘍効果を発揮し、著明な生存期間の延長をもたらすことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、①ヒト胃癌細胞株ならびにがん微小環境を構成する線維芽細胞におけるHGF/MET発現の検討 ②臨床サンプルを用いたHGF/MET発現の免疫組織学的検討 ③HGFの胃癌細胞に対する生物活性誘導(増殖・運動性)ならびにMET TKIsによるこれら誘導活性の抑制効果の検討 ④in vitroの検討と併せ、すでに確立済みの癌性腹膜炎発症マウスモデルを用いてin vivoにおけるMET阻害剤の抗腫瘍効果の検証を行う を予定していた。これまでの検討で、上記検討をすでに終了した。
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今後の研究の推進方策 |
胃癌腹膜播種形成には、MET増幅ばかりでなく、とくに悪性腹水を伴う癌性腹膜炎形成には、HGF(パラクリン機序により間質より誘導)によって細胞増殖の誘導がおこるスキルス胃癌由来の胃癌細胞株のみが本病態の形成能を有することが今回の検討で明らかとなった。 今後、非スキルス胃癌で腹膜播種を形成しない胃癌細胞株との比較を行い、細胞増殖の機序について METリン酸化や細胞内シグナルの相違について詳細に検討を加える予定である。 また、さきの検討で明らかとなったEGFRの重要な役割にも注目し、METとEGFRの両者を用いた阻害試験を マウス癌性腹膜炎モデルを用いて検証する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
「該当なし」
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