研究課題
胃癌診療の中で、その予後を最も左右する癌性腹膜炎の成因は不明であり今なお効果的な治療法がない。我々は初めて、CXCR4/CXCL12 axisがさらにEGFR/EGFRリガンド(amphiregulinならびにHB-EGF)axisが、しかも互いに相互促進作用しながら、本病態形成に重要な役割を果すことを見出した。本研究では、高度な間質増生を伴うスキルス胃癌が高頻度に癌性腹膜炎を発症するという重要な臨床知見を踏まえ、癌の微小環境の新たな視点に基づく解析(癌間質誘導性Hepatocyte Growth Factor (HGF)を主な標的として上記2つの機序との相互促進作用の詳細な検討)から、真の胃癌標的治療法の確立を目指す。これまでの研究で、スキルス胃癌細胞株のみがマウス腹腔内移植により悪性腹水を伴う癌性腹膜炎を形成することが判明し、腹水形成性スキルス胃癌細胞のみがHGFにより著明な増殖が誘導されることが判明した。同じスキルス胃癌でも増殖誘導の起こらない細胞株では腹水形成を含めてがん性腹膜炎発症はおこらないことも判明した。さらに、MET遺伝子増幅を有する胃癌細胞(4ー10%)がスキルス胃癌細胞同様がん性腹膜炎形成能をもつことがマウスモデルで確認された。ただし、悪性腹水の産生は伴わなかったことは興味深い。スキルス胃癌ならびにMET遺伝子増幅胃癌によるがん性腹膜炎形成後からの治療開始でも、MET阻害剤(METーTKI)は著明に病態を改善し、有意な生存期間延長をもたらした。本年度は、マウス腹腔内移植により悪性腹水を伴う癌性腹膜炎を発症したスキルス胃癌のHGF誘導性増殖機序について検討をさらに加え、in vivoにおいては、EGFR抗体とMETーTKIによる併用阻害効果の検討を行い、単独投与に比して有意に生存期間の延長がもたらされることを明らかにした。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) 図書 (1件)
Cancer Sci
巻: 104 ページ: 1640-1646
10.1111/cas.12301