本申請研究は、より臨床効果を高める事に重点をおいた癌免疫細胞療法の開発をめざし、酸化ストレスに伴う免疫抑制機序について解析する事を目的とする。 1.当科において手術的に切除した食道扁平上皮癌(ESCC)症例(35例)・胃癌症例(50例)を対象として、腫瘍局所における酸化ストレス(ROS)の程度とCD8陽性T細胞・regulatory T細胞・Th17T細胞・NK細胞の浸潤程度を免疫組織学的染色にて測定し、ROSの程度と各T細胞分画・NK細胞の浸潤頻度について比較検討を施行した。 2.同症例の切除標本におけるtumor infiltrating lymphocyte (TIL)と末梢血単核球(PBMC)において、ROSの状態と各T細胞分画数・NK細胞数をフローサイトメトリー法(FACS)で測定し、これらの相関関係を検討した。 3.2.と同じサンプルにおけるNK細胞中のCD16^-CD56^<bright> NK細胞とCD16^+CD56^<dim> NK細胞(細胞傷害能を有するNK細胞)の状態(割合・発現強度)を解析した。また、in vitroの実験系において、ROSがNK細胞へ及ぼす影響(apoptosis誘導、細胞傷害能低下)についてFACSとHerceptin-mediated-ADCCにて検討した。 腫瘍局所において、ROSの増加(p<0.01)とCD56^<dim> NK細胞の割合の減少(p<0.01)を認め、さらにROSとCD56^<dim> NK細胞の割合には負の相関関係がある事を認めた。また、in vitroの実験系において、ROSの負荷により、CD56^<dim> NK細胞はよりapoptosisに陥り易く、NK細胞のADCC活性も低下した。担癌患者におけるROSの増加は、NK細胞機能不全の原因の一つであり、NK細胞の機能不全を改善するために抗酸化療法が有効となる可能性が示唆された。ROSと各T細胞分画の関係については、現在解析中であり、近日中に投稿する予定である。
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