研究課題/領域番号 |
23591930
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山崎 誠 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50444518)
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研究分担者 |
瀧口 修司 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00301268)
宮田 博志 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80362713)
黒川 幸典 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10470197)
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キーワード | 胃癌 / 網羅的発現解析 / 腹膜播種 / 化学療法感受性 |
研究概要 |
進行胃癌におけるチロシンキナーゼの網羅的遺伝子発現解析の結果から、新たにKSR1という分子の発現レベルが予後に関連することを見出した。この分子はRas経路のpositive regulatorとして働き、rafやMEK,ERKとともに働いて、細胞増殖やtransformationに関係すると報告されている。これまで、子宮体がんや膵癌で発現異常があるといわれていたが胃癌においては報告がない。 そこで、臨床検体におけるKSR1の発現と臨床病理学的因子との関連を解析した。KSR1発現の亢進は約25%の症例で認めており、高発現する症例においては有意に予後が不良であった。また、予後が不良となる原因を解析したところ、特に腹膜播種との関連が示唆された。in vitroにおけるKSR1の発現制御(強制発現、発現抑制)実験から、KSR1は細胞増殖のみならず細胞浸潤に関与することが明らかになった。これらの結果は現在、論文投稿中である。 また、網羅的遺伝子発現解析の結果からMEKの発現と予後に関連があることが示された。さらにMEKと遺伝時発現パターンの似ている遺伝子をクラスター解析したところ、FOXM1という分子が同定された。臨床検体におけるFOXM1発現と臨床病理学的因子との関連を解析したところ、FOXM1発現は独立した予後因子であり、かつタキソテールによる化学療法の感受性と有意に関連することが明らかになった。 タキソテールの感受性について、in vitroにおいても同様の結果が得られ、FOXM1は化学療法感受性因子であることが示唆された。 この結果については、論文(Annals of Surgical Oncology)に報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
胃癌の予後に関連するチロシンキナーゼを同定することができた。また、同定されたチロシンキナーゼのみならず関連解析(クラスター解析)によって新たな予後因子を同定することができ、おおむね順調に進展していると考える
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今後の研究の推進方策 |
今回見出されたKSR1は腹膜播種との関連が示唆され多。腹膜播種に関連するチロシンキナーゼの同定およびその機能解析は、本研究の最重要項目であり、今後KSR1の機能解析を継続する。 また、腹膜播種に対する治療として、腹腔内へのタキサン系抗がん剤の投与が注目されている。今回タキソテール感受性因子としてのFOXM1を同定しており、腹膜播種の機能解析のみならず、腹膜播種に対する個別化医療への可能性も模索していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
マウスによる胃癌腹膜播種モデルを作成、KSR1の発現抑制・強制発現などに使用を要する。多施設共同で行っている腹腔内洗浄液の回収・搬送・遺伝子発現解析などに使用する予定である。 本研究の成果を学会活動や論文による報告に研究費を使用する予定である。
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