研究課題
研究課題における目的は担癌患者の末梢血中に循環していると報告されている腫瘍細胞(circulating tumor cell、CTC)を我々の研究室で開発した腫瘍細胞特異的にGFP蛍光タンパク質を発現するアデノウイルスTelomescanにより可視化し、検出すること、さらにはその検出された腫瘍細胞を回収し、ごく少量の細胞において遺伝子解析を行うことを目的としている。これまでの研究成果や他の報告からCTCとされる細胞は血液数ml中に数個から数十個の範囲で検出されている。それを踏まえると今回の課題ではごく少数細胞での遺伝子解析が重要である。今年度まずはCTCと似た状況を想定し、遺伝子解析の検出限界を検討した。KRAS遺伝子のcodon12に変異を有するSW480細胞を用いて、一定数の癌細胞からDNAを抽出し、PCRで増幅後にKRAS遺伝子に関するシークエンス解析を行ったところ、10個以下の極少数細胞での遺伝子変異解析でも既知の遺伝子変異が検出可能であった。遺伝子変異を持たない血球細胞の中で遺伝子変異を有するCTCがどの程度の割合混入していても検出可能か、KRAS遺伝子変異の無い肺癌細胞にSW480 大腸癌細胞を一定数混入させ検出を試みた。30%以上の割合で遺伝子変異細胞が含まれていれば、KRAS遺伝子変異は検出可能であるという結果が得られた。学内の倫理委員会にCTC遺伝子解析に関する臨床研究プロトコールを提出し、審査を経て承認された。
2: おおむね順調に進展している
当初計画していたマイクロマニピュレーターによって個々のGFP発現細胞を補足する作業はマイクロマニピュレーターの老朽化によって不可能であったし、担癌患者でのCTC検出までには至っていない。しかし、現時点で末梢血内に存在するであろうCTCの遺伝子解析が既知の癌細胞のKRAS遺伝子に関しては可能であることが確認できた点において、重要な部分は達成できたと考える。
23年度検討したKRAS遺伝子の変異検出方法を踏まえ、24年度は臨床での大腸癌の担癌患者において、末梢血を採取し、そのCTCの検出とその遺伝子解析が可能かどうかを検討する。大腸癌以外の癌腫における、遺伝子解析の候補遺伝子の検索を引き続き行う。えられた結果に関して、学会での報告、論文執筆を積極的に行う。
遺伝子解析に必要なプライマー、酵素、試薬の購入費用に使用する予定である。また研究発表のための旅費、校閲などにも使用する予定である。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 8件) 学会発表 (3件)
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