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2012 年度 実施状況報告書

17q25.1領域の全転写産物解析による食道癌原因遺伝子の同定

研究課題

研究課題/領域番号 23591937
研究機関岩手医科大学

研究代表者

岩谷 岳  岩手医科大学, 医学部, 講師 (70405801)

研究分担者 田中 文明  九州大学, 大学病院, 助教 (30332836)
キーワード食道癌 / 変異 / 癌抑制遺伝子
研究概要

次世代シークエンサーを用いた網羅的遺伝子発現解析 (RNA-seq解析) から17番染色体長腕 (17q25) 領域に食道癌で有意に発現低下する2つの遺伝子EVPL, ST6GALNAC1があげられ90症例のqRT-PCRによる検証でも両者が癌部で発現低下していることを明らかにした。EVPLの変異解析は過去に検討しており、今回TOC locusにより近いST6GALNAC1について変異解析を施行した。46例の食道癌genome DNAのSanger sequenceにより14例で変異を認めた。ST6GALNAC1領域上にはD17S2238, D17S2243, D17S2245の3つのmicrosatellite markerが存在する。これらを用いたPCR-microsatellite解析では約60%の症例でLOHが確認された。前述のST6GALNAC1変異はアミノ酸変化を伴うミスセンス変異やdeletionであるにもかかわらず、多くが同一症例の周囲食道粘膜でも確認された。ST6GALNAC1には変異以外の機序で発現抑制が起こっている可能性を考え、同遺伝子のメチル化状態も検索した。ER, PgR陽性乳癌ではST6GALNAC1の転写開始点2bp上流に存在するGC配列のメチル化により同遺伝子の有意な発現低下が認められる(Hum Mol Genet, 2010)。食道癌培養細胞4株 (TE1, TE8, TE9, KYSE150)を用い5-Aza-dC処理によるST6GALNAC1発現変化を検討では、いずれの細胞でも発現の回復が認められた。食道癌におけるST6GALNAC1の不活化は変異・欠失・メチル化が関与している可能性を明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

網羅的遺伝子発現解析から食道癌原因遺伝子の候補としてST6GALNAC1を同定し、Sanger sequenceから食道癌症例でST6GALNAC1のcoding領域に高頻度にアミノ酸変化を伴う変異が生じていることを明らかにした点はほぼ計画どおりである。しかし、これらの変異が周囲正常食道粘膜でも認められ腫瘍特異的ではなかったことから、変異以外の不活化機序としてメチル化検索を施行中であり、これは順調に進行中である。
当初の予定にはなかったが、現在食道癌症例における次世代シークエンサーによる網羅的変異解析 (Exome解析)も平行して施行中であり、これは17q25.1上の遺伝子群の腫瘍特異的変異も明らかにすることができると思われる。これまで連鎖解析や遺伝子欠失領域の検索あるいは遺伝子発現解析から候補遺伝子を絞り込んだ後に、変異解析・機能解析を施行してきたが、Exome解析ではhypothesis freeに原因遺伝子を同定できる可能性がある。

今後の研究の推進方策

次世代シークエンサーによる網羅的変異解析は今日ではかなり普及した技術となってきた。われわれは昨年より食道扁平上皮癌の網羅的遺伝子変異解析 (Exome解析)も試みている。TOC locus上の食道癌/Tylosis原因遺伝子の同定を目的としこれまで網羅的遺伝子発現解析から候補遺伝子を探求してきたが、変異同定を目的とするExome解析では同領域における原因遺伝子の変異を直接的に明らかにできる可能性がある。ごく最近Dianaらは家族性食道癌であるTylosis家系の患者で17q25.1のTOC locus内のRHBDF2遺伝子に変異が認められ、同遺伝子が疾患の原因遺伝子である可能性を示唆している。しかし、われわれの20症例における散発性食道癌のExome解析では、17q25.1上のRHBDF2を含むいずれの遺伝子にも高頻度の変異(recurrent mutation)は見られなかった。今後の研究推進方策としては ①発現解析より絞り込まれたSt6GALNAC1遺伝子(およびEVPL遺伝子)のメチル化状態の解析および細胞機能解析の継続を行う。②食道扁平上皮癌症例のExome解析による17q25領域の全遺伝子の網羅的変異検索:20症例の解析は終了しており、今後50症例程度の解析を予定している。

次年度の研究費の使用計画

食道扁平上皮癌原因候補遺伝子ST6GALNAC(およびEVPL)のメチル化解析および細胞機能解析:メチル化解析は食道癌培養細胞株・臨床検体を用いたBislufite sequence法により施行する予定である。ビスルファイト処理、PCR、TA cloning、Sequenceにかかる経費が必要となる。網羅的発現解析により食道癌で有意な発現低下を認めたEVPL遺伝子に関しても同様にメチル化解析を行う。機能解析については、食道扁平上皮癌細胞株および正常食道上皮細胞(HET1A)を用いて、これらの遺伝子のknock downおよび過剰発現により細胞機能解析を行う。細胞実験関連試薬、発現解析に用いる試薬などに研究費を使用する予定である。
食道扁平上皮癌症例における遺伝子変異解析:次世代シークエンサーによるExome解析は現在進行中である。食道癌および正常上皮の検体採取はLaser microdissection (LMD)を用いているが、LMD, DNA抽出、Exome解析にて認められた遺伝子変異のSanger sequenceによる検証に使用するシークエンス関連試薬に研究費を使用する予定である。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2012

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (5件)

  • [雑誌論文] Current topics in mutations in the cancer genome2012

    • 著者名/発表者名
      Iwaya T, Mimori K, Wakabayashi G.
    • 雑誌名

      Nihon Geka Gakkai Zasshi

      巻: 113(2) ページ: 185-90

  • [雑誌論文] Downregulation of miR-144 is associated with colorectal cancer progression via activation of mTOR signaling pathway.2012

    • 著者名/発表者名
      Iwaya T, Yokobori T, Nishida N, Kogo R, Sudo T, Tanaka F, Shibata K, Sawada G, Takahashi Y, Ishibashi M, Wakabayashi G, Mori M , Mimori K.
    • 雑誌名

      Carcinogenesis

      巻: 33(12) ページ: 2391-7

    • DOI

      10.1093/carcin/bgs288.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Molecular Marker Identification for Relapse Prediction in 5-FU-Based Adjuvant Chemotherapy in Gastric and Colorectal Cancers.2012

    • 著者名/発表者名
      Ishida K, Nishizuka SS, Chiba T, Ikeda M, Kume K, Endo F, Katagiri H, Matsuo T, Noda H, Iwaya T, et al.
    • 雑誌名

      PLoS One

      巻: 7(8) ページ: e43236

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0043236

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Expression of Mesenchymal Markers Vimentin and Fibronectin: The Clinical Significance in Esophageal Squamous Cell Carcinoma.2012

    • 著者名/発表者名
      Sudo T, Iwaya T, Nishida N, Sawada G, Takahashi Y, Ishibashi M, Shibata K, Fujita H, Shirouzu K, Mori M, Mimori K.
    • 雑誌名

      Ann Surg Oncol

      巻: Epub ページ: Epub

    • DOI

      10.1245/s10434-012-2418-z

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Copy number loss of FBXW7 is related to gene expression and poor prognosis in esophageal squamous cell carcinoma.2012

    • 著者名/発表者名
      Yokobori T, Mimori K, Iwatsuki M, Ishii H, Tanaka F, Sato T, Toh H, Sudo T, Iwaya T, Tanaka Y, Onoyama I, Kuwano H, Nakayama KI, Mori M.
    • 雑誌名

      Int J Oncol

      巻: 41(1) ページ: 253-9

    • DOI

      10.3892/ijo.2012.1436

    • 査読あり
  • [学会発表] Analysis of Notch1 gene in esophageal squamous cell carcinoma.2012

    • 著者名/発表者名
      Iwaya T, Sawada T, Takahashi Y, Ishibashi M, et al.
    • 学会等名
      第71日本癌学会
    • 発表場所
      札幌
    • 年月日
      20120919-20120921
  • [学会発表] 胃癌症例におけるRFWD2の機能解析と臨床的意義について.2012

    • 著者名/発表者名
      澤田 元太, 石橋 正久, 高橋 佑典, 岩谷 岳, 首藤 朝也, 田中文明, 柴田浩平, 三森功士, 森正樹, 土岐 祐一郎.
    • 学会等名
      第67回日本消化器外科学会
    • 発表場所
      富山
    • 年月日
      20120718-20120720
  • [学会発表] 胃癌骨髄・原発巣におけるHistone mRNAおよびmiR-760発現変化2012

    • 著者名/発表者名
      岩谷岳, 三森功士, 西田尚弘, 古後龍之介, 赤木智徳, 高橋佑典, 澤田元太, 石橋正久, 柴田浩平, 田中文明, 主藤智也, 若林剛, 深川剛生, 笹子三津留, 森正樹.
    • 学会等名
      第112回日本外科学会
    • 発表場所
      幕張
    • 年月日
      20120412-20120414
  • [学会発表] 胃癌におけるHER2/neuを制御するマイクロRNAの臨床病理学的意義2012

    • 著者名/発表者名
      西田尚弘, 三森功士, 石橋正久, 高橋祐典, 澤田元太, 岩谷岳, 主藤朝也, 田中文明, 柴田浩平, 石井秀始, 森正樹.
    • 学会等名
      第112回日本外科学会
    • 発表場所
      幕張
    • 年月日
      20120412-20120414
  • [学会発表] 大腸癌におけるmicroRNA 144によるmTOR signaling pathwayの制御.2012

    • 著者名/発表者名
      石丸神矢, 岩谷岳, 高橋佑典, 石橋正久, 澤田元太, 古後龍之介, 西田尚弘, 主藤朝也, 田中文明, 柴田浩平, 三森功士, 森正樹.
    • 学会等名
      第112回日本外科学会
    • 発表場所
      幕張
    • 年月日
      20120412-20120414

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公開日: 2014-07-24  

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