研究概要 |
次世代シークエンサーを用いた網羅的遺伝子発現解析 (RNA-seq解析) から17番染色体長腕 (17q25) 領域に食道癌で有意に発現低下する2つの遺伝子EVPL, ST6GALNAC1があげられ90症例のqRT-PCRによる検証でも両者が癌部で発現低下していることを明らかにした。EVPLの変異解析は過去に検討しており、今回TOC locusにより近いST6GALNAC1について変異解析を施行した。46例の食道癌genome DNAのSanger sequenceにより14例で変異を認めた。ST6GALNAC1領域上にはD17S2238, D17S2243, D17S2245の3つのmicrosatellite markerが存在する。これらを用いたPCR-microsatellite解析では約60%の症例でLOHが確認された。前述のST6GALNAC1変異はアミノ酸変化を伴うミスセンス変異やdeletionであるにもかかわらず、多くが同一症例の周囲食道粘膜でも確認された。ST6GALNAC1には変異以外の機序で発現抑制が起こっている可能性を考え、同遺伝子のメチル化状態も検索した。ER, PgR陽性乳癌ではST6GALNAC1の転写開始点2bp上流に存在するGC配列のメチル化により同遺伝子の有意な発現低下が認められる(Hum Mol Genet, 2010)。食道癌培養細胞4株 (TE1, TE8, TE9, KYSE150)を用い5-Aza-dC処理によるST6GALNAC1発現変化を検討では、いずれの細胞でも発現の回復が認められた。食道癌におけるST6GALNAC1の不活化は変異・欠失・メチル化が関与している可能性を明らかにした。
|