研究課題/領域番号 |
23591940
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
長井 洋平 熊本大学, 医学部附属病院, 診療助手 (30551254)
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研究分担者 |
渡邊 雅之 熊本大学, 大学院生命科学研究部, 講師 (80254639)
林 尚子 熊本大学, 医学部附属病院, 非常勤診療医師 (20452899)
馬場 祥史 熊本大学, 医学部附属病院, 助教 (20599708)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 食道癌 / microRNA / 偽遺伝子 / マイクロアレイ / PTEN |
研究概要 |
我々は、食道癌において、食道扁平上皮癌患者においてmicroRNA(以下miRNA, miR)-21が、癌抑制遺伝子であるPDCD4を制御していることを証明した(Hiyoshi et. al. Clin.Cancer Res. 2009)。その後、miR-21は食道扁平上皮癌患者の血清中でも高発現していることを証明し(Kurashige et. al. J Surg Oncol. 2012)、また食道扁平上皮癌ではその他にmiR-223が上昇しており、癌抑制遺伝子FBXW7を制御していることを証明した(Kurashige et. al. Br J Cancer. 2012)。食道扁平上皮癌以外でも、胃癌においてmiR-200bが、癌の転移に関連するしているZEB2を制御し、転移に関わること(Kurashige et. al. Ann Surg Oncol. 2012)や、膵臓癌でmiR-101が、EZH2に関連があることを報告した(Nakahara. et.al. Ann Surg Oncol. 2011)。L. Polisenoらは、2010年にPTENの偽遺伝子(pseudogene)であるPTENP1が、microRNAを介して互いに制御し合っており、miRNAが本来結合する標的遺伝子の3’UTRと同様の遺伝子配列を偽遺伝子が持っていた場合、偽遺伝子はおとりとなり、対応する遺伝子と同様の生物学的役割を担うことを報告した(L. Poliseno et.al.Nature 2010)。我々は、この報告と上記の我々の研究の結果を元に、それぞれの遺伝子におけるmiRNAを介した遺伝子発現制御機構について現在検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々は、まず、癌抑制遺伝子PTENとその偽遺伝子であるPTENP1の発現解析を、食道癌を含む消化器癌細胞株54種類で、real time PCRにて検討した。その結果、PTENとPTENP1の発現は相関関係にあることが分かった。また、PTENをtargetとするmiRNAの中でmiR-19、21、26a、26bの発現を調べるとそれぞれのmiRはPTENの発現と逆相関関係にあることが分かった。我々はこれらの結果を元に食道扁平上皮癌臨床サンプルを用い、その発現を検討中である。 また、癌抑制遺伝子FBXW7をmiR-223が制御していることを食道扁平上皮癌で証明したが、この結果を元に、FBXW7を用いた治療法について現在検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
偽遺伝子の制御機構について報告したL. Polisenoらは、その後、miRNAが結合する遺伝子の3’UTRを共通に持つ遺伝子が、おとりとなってmiRNAを競合しあう制御機構をcompetitive endogenous RNAs(ceRNAs)と報告した(Leonardo Salmena at. al. Cell. 2011)。この仮説によると、miRNAを介したこの一連の遺伝子発現制御機構は偽遺伝子だけではなく、様々な遺伝子の発現制御ネットワークを形成しいるものと考えられる。この報告の結果、我々は、miR-21に関連したPTEN、偽遺伝子PTENP1の発現席魚機構の解明だけでなく、miR-223によって制御されるFBXW7のceRNAsによる遺伝子発現制御機構について研究を進め、FBXW7の発現再上昇を促す、従来の治療法とは異なる新しい治療法について検討中である。
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次年度の研究費の使用計画 |
今回の消化器癌におけるmiRNAと標的遺伝子、偽遺伝子の制御機能の解明解明の研究においては、消化器癌の発現量の比較検討ではReal time PCR 、免疫染色等を行う必要があり、候補遺伝子を絞り込み、その発現を確認するために多大な費用を要する。 食道扁平上皮癌におけるtotal RNAの抽出、発現の解析をまずは行う必要性があり、その試薬購入や、microarrayの受託費用に研究費が必要である。
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