研究課題
KRAS、BRAF、PIK3CA遺伝子変異は、様々な癌種において報告され、臨床的に極めて重要なジェネティック変化である。しかし、食道扁平上皮癌におけるKRAS、BRAF、PIK3CA遺伝子変異と臨床病理学的因子、予後の関係を網羅的に解析した研究はない。我々は食道扁平上皮癌切除標本203例を用いてKRAS、BRAF、PIK3CA遺伝子の変異をPyrosequencing technologyにて評価した。その結果、食道扁平上皮癌にて、KRAS、BRAF遺伝子が臨床的意義を示さないのに対し(Ann Surg Oncol 2012)、PIK3CA遺伝子変異は21.0%に認め、変異群が野生型群に比べてDisease free survivalおよび Cancer-specific survivalが有意に短い事を示した(Clin Cancer Res. 2013)。食道扁平上皮癌は集学的治療を駆使してもなお予後不良であり、早期に他臓器転移を伴う事がある。従って、原発巣及び転移巣における遺伝子変異の相関性を明らかにする事は臨床上極めて重要である。転移を有する食道癌に対して転移巣を含めた同時切除を施行する事は現時点ではなく、今回はまず大腸癌を対象に評価を行った。同時性肝転移を有する大腸癌症例のうち、同時切除術を施行した症例を対象に評価した。原発巣26例、肝転移巣42例、転移陽性リンパ節6例のKRAS、BRAF、PIK3CA遺伝子の変異をPyrosequencing technologyにて評価し、相関性を検討した。また、消化管癌におけるDNA低メチル化のマーカーとして注目されるLINE-1メチル化レベルに関しても評価した。KRAS、BRAF、PIK3CA遺伝子の一致率は94%、100%、88%と高値だった。LINE-1メチル化レベルに関しても、原発巣、肝転移巣、転移陽性リンパ節において相関性を認めた。以上より、原発巣と転移巣の遺伝子発現及びLINE-1メチル化レベルに相関性がある事をBritish Journal of Cancerに報告した。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Br J Cancer.
巻: 109 ページ: 408-415
10.1038/bjc.2013.289