研究課題
miR-128の発現は様々な悪性腫瘍において認められており、転移と関与している可能性もあると報告されている.以前に当教室では、食道扁平上皮癌の切除標本から抽出したRNAを用いたPCRの結果と臨床データから、miR-128bが食道扁平上皮癌の予後に関与している可能性があることを報告した.今回、miR-128bが食道扁平上皮癌の予後に影響する機序の調査において、われわれは細胞の移動に関与するとされるAktの基質Girdinに着目し、食道扁平上皮癌におけるGirdinの働きを研究した.Girdinに対する抗体を用いた免疫蛍光染色では、EGFで食道扁平上皮癌細胞株を刺激すると、細胞は葉状仮足を形成し、その先端にF-actinとGirdinの集積が認められた.Girdinにはactinとの結合部位があるため、上記結果からは、actinと結合したGirdinが細胞の進行方向に集積することで葉状仮足を形成する可能性があると考えられた.次に食道扁平上皮癌細胞株を用いたBoyden chamber assayで、Girdinと食道扁平上皮癌細胞の移動能との関係について評価した.siRNAでGirdinをknockdownすると、有意に食道扁平上皮癌細胞の移動能は低下した.食道扁平上皮癌の手術標本を用いた実験も施行した.食道扁平上皮癌の腫瘍より抽出したGirdinのRNAは、食道の正常粘膜より抽出したGirdinのRNAよりも有意に高値であった.また臨床データとの関連では、食道扁平上皮癌の手術患者をGirdinの高発現群と低発現群に分けると、癌の深達度はGirdinの高発現群で有意に深く、予後もGirdinの高発現群で有意に不良であった.以上より、Girdinは食道扁平上皮癌細胞の移動に関与している可能性があると考えられた.また臨床においても、Girdinは食道扁平上皮癌の浸潤能を高めることで食道扁平上皮癌の予後を悪化させる可能性があることが示唆された.
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Oncol Rep
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