研究課題/領域番号 |
23591951
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研究機関 | 千葉県がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
田川 雅敏 千葉県がんセンター(研究所), がん治療開発グループ, 部長 (20171572)
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研究分担者 |
島田 英昭 東邦大学, 医学部, 教授 (20292691)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 食道癌 / アデノウイルス / 化学療法 / CD46分子 / 受容体 |
研究概要 |
消化器固形癌は日本人においてその頻度が高く、死亡者数としても常に上位を占める疾患である。現在の治療法でも対応出来る例も少なくないが、進行癌となった場合や化学療法が無効になった症例では、有用な治療手段は残されていない。そこで、本研究では、アデノウイルスの増殖による細胞死を利用した新規治療法の開発を目的とする。増殖性ウイルスによる細胞傷害活性は、従来の抗癌剤とその作用機序が異なると推定され、そのためウイルス製剤と化学療法との併用も可能と考えられる。このように新規治療法の開発は、現行の治療法の選択肢を拡大させ、従来の治療法では無効な症例に対しても、一定の治療効果を発揮できる利点がある。当該研究では、アデノウイルスの増殖を腫瘍に特異性を有して惹起させるために、同ウイルスの初期転写調節蛋白の発現を、腫瘍に特異性を有した転写調節領域で制御させる改変を行った。また、ウイルスの標的細胞への感染効率を向上させるため、腫瘍細胞で高い発現を示す分子を受容体とするウイルスへと、その受容体結合構造の一部を変換した。すなわち、受容体との結合領域の遺伝子を従来のタイプ5型から35型へと組換えることによって、細胞表面の結合分子をCAR分子よりCD46分子へと変換させた。CD46分子の発現は正常細胞においても見られるが、腫瘍特異性を有する転写調節機能によって、ウイルスの安全性を確保できるはずである。緑色蛍光蛋白質(green fluorescence protein)の遺伝子を組み込んだアデノウイルス5型と35型を使用して、食道癌がんを対象に感染効率を検討すると、すべての細胞で35型ウイルスの方が感染効率は良かったが、その効率そのものはCD46分子の発現と一定の相関性を示してはいなかった。また、これらのウイルスを食道癌細胞に感染させると、細胞傷害活性が検出されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ウイルスの改変が出来ており、食道癌細胞を用いて細胞傷害活性まで検討しえたので、一定の進捗状況が見られていると考えられる。しかし、正常細胞におけるウイルスの同活性に関して明確なデータが得られていない。In vivoとの状況とは異なり、正常細胞といえどもin vitroにおいて、ある程度の増殖が観察されるからだと推定される。
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今後の研究の推進方策 |
増殖型ウイルスの抗腫瘍効果を、各種食道癌細胞を対象にWST法、トリパンブルー法で検討し、その細胞傷害機構に関して細胞周期、ウエスタンブトット法による細胞死関連蛋白の発現を検討する。また、抗腫瘍効果を動物実験でも確認する。ウイルスによる細胞死がいわゆるアポトーシスであるのかどうかを確認する必要があるが、使用した食道癌細胞の半数は、癌抑制遺伝子p53が変異していることが判明している。したがって、p53非依存的な細胞死についても検討を加える必要がある。
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次年度の研究費の使用計画 |
ウイルスの作製が順調に進行したため、当該作製費用に余裕が生じ、その結果細胞傷害活性の検討にも、一部使用が可能であった。本年度以降においては、ウイルスの精製等に分子生物試薬、細胞培養系を用いた細胞死の検討として細胞培養関係の物品、各種蛋白質発現のために抗体等の一般生化学試薬、動物実験用のマウス、これらの物品購入等に使用する。。
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