研究課題/領域番号 |
23591955
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
廣瀬 まゆみ 金沢大学, がん進展制御研究所, 研究員 (00353524)
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研究分担者 |
源 利成 金沢大学, がん進展制御研究所, 教授 (50239323)
川上 和之 金沢大学, がん進展制御研究所, 准教授 (00293358)
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キーワード | GSK3β / 消化器がん / 抗がん剤 / 薬剤スクリーニング |
研究概要 |
我々は、GSK3β阻害による細胞生存や増殖抑制効果を大腸がんをはじめとする各種消化器がん細胞と動物実験で実証してきた。現在、開発が進められているGSK3β阻害剤は治療薬に至っていない。そこで、GSK3β阻害効果にもとづくがん治療法の実験的根拠を大腸がんを中心に示し、その成果をもとに他の消化器がん、とくに膵がんなど強度の浸潤と治療抵抗性を特徴とする難治性がんの治療法開発への応用性を見極めることを目的とする。 本年度は、前年度に引き続き、本来の薬効とは関係なくGSK3β阻害効果が判明した医薬品について、培養がん細胞のGSK3β阻害効果と、細胞生存や細胞運動性に対する効果を検討した。 当該医薬品のオランザピン[向精神薬]、シメチジン[ヒスタミンH2受容体阻害剤]、バルプロン酸[抗てんかん薬]、ヒドロキシクロロキン[SLE、抗マラリア治療薬]、ゲミフロキサシン[抗菌剤]について、培養がん細胞におけるGSK3β阻害効果と、細胞生存や細胞運動性に対する効果を検討した。当該医薬品の薬効濃度におけるGSK3β阻害効果をグリコーゲン合成酵素 (GS)のリン酸化レベルの変化を指標に解析した。その結果、これらの医薬品は濃度依存的にGSのリン酸化を抑制したことから、GSK3β活性阻害作用が確認された。がん細胞に対する抗腫瘍効果をMTT assayやトランスウェル法で検討したところ、これらの医薬品はがん細胞の生存、増殖と細胞運動や浸潤を抑制した。さらに、医薬品の併用により効果的な抗腫瘍効果が観察された。以上の結果から、安全性が確認されたこれらの医薬品の併用はGSK3β阻害による大腸がん治療法の開発に有用であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は研究代表者の体調不良により研究計画が遅延したが、本年度は順調に計画が進み、膵がんおよび大腸がんに対するGSK3betaを標的とした既存医薬品を利用した新たな化学療法の開発について提言ができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後、GSK3beta阻害効果のある医薬品を用いた動物実験を行い、細胞実験で効果が確認できた医薬品について、動物実験においても抗腫瘍効果があることを確認する。また、GSK3betaを標的とした、医薬品のスクリーニング方法開発について研究を進める予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度に、既存医薬品の継続的な抗腫瘍効果の観察実験を行うために使用する計画である。
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