研究課題
GSK3betaはセリン・スレオニンリン酸化酵素であり,糖代謝の制御、細胞の増殖・分化・運動などに関与する多機能酵素である。我々は、GSK3betaが、がん細胞で過剰発現と異常活性を示し、がん細胞の生存、増殖や遊走を維持、促進することを大腸がんや膵臓がんなどの消化器がん細胞株用いてin virtoおよびin vivoにおいて証明してきた。現在、開発が進められているGSK3beta阻害剤は治療薬に至っていない。そこで、本来の薬効とは関係なくGSK3beta阻害効果が報告されている既存医薬品での大腸がんおよび膵臓がんの治療効果を検討した。すなわち、オランザピン[向精神薬]、シメチジン[ヒスタミンH2受容体阻害剤]、バルプロン酸[抗てんかん薬]、ヒドロキシクロロキン[SLE、抗マラリア治療薬]、ゲミフロキサシン[抗菌剤]について、がん細胞におけるGSK3beta酵素阻害効果と、細胞の生存・運動性に対する効果を検討した。医薬品は薬理学的濃度の範囲で濃度依存的にグリコーゲン合成酵素のリン酸化を阻害し、かつ細胞運動を阻害した。その効果は、2種混合処理することにより、単剤使用よりも効果的であった。細胞増殖阻害実験では、単独使用(薬理学的濃度)でがん細胞の生存を阻害しなかったが、2種類の医薬品を処理することにより、ある種の組み合わせは、がん細胞の生存を阻害した。特にハイドロキシクロロキンと他の薬剤と組み合わせる事により高い抑制効果があった。以上の結果は、既存医薬品をDrug repositioningとして利用した安全性と有効性の高いGSK3betaを分子標的とした大腸がん治療のための臨床試験開始の足がかりになり得ることを示唆した。
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PLoS One
巻: 8(2) ページ: e55289
10.1371/journal.pone.0055289
http://www.kanazawa-u.ac.jp/~ganken/shuyoseigyo/
http://www.kanazawa-u.ac.jp/~ganken/department/mccb/10.html
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