研究課題/領域番号 |
23591956
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
片山 寛次 福井大学, 医学部附属病院, 教授 (30204431)
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研究分担者 |
村上 真 福井大学, 医学部, 助教 (00334821)
三好 憲雄 福井大学, 医学部, 助教 (40209961)
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キーワード | 5-ALA / 腹膜転移 / PDT |
研究概要 |
現在最も治療が困難である癌の腹膜播種性転移に対する治療効果を改善する目的で研究を行っている.従来,腹膜転移に対しては可及的な腹膜切除と腹腔内温熱化学療法(HIPEC)が行われてきた.しかし,腸管などを大量に切除することによる臓器欠損障害がQOLを著しく損い,ある程度以上の深さをもった播種巣は治療できない.本研究では,5-AminoLevulinicAcid(ALA)を,従来の経口投与だけではなく,腹腔内投与して播種巣に取り込ませ,光励起により播種巣を発光させることで,必要かつ十分な切除が行える可能性について実験的研究を行う.また,切除困難な部位はレーザー高照度による光線力学療法(PDT)についても研究する. 腹膜播種性転移に対し,腫瘍集積性があり代謝を経て蛍光物質であるProtoporphyrinIX( Pp )に変化するALAを腹腔内投与して播種巣に取り込ませ,光励起により播種巣内のPpを発光させることで手術中に腹膜転移の部位を明らかにすることで,必要かつ十分な切除が行える可能性があると考える.また,切除困難な部位はレーザー高照度によるPDTも可能である.腫瘍細胞や腫瘍組織内の新生血管の内皮細胞内に取り込まれた光感受性物質は,レーザー光が照射されることにより,活性酸素を発生させ,この活性酸素により,腫瘍組織が傷害を受けて消退することを期待する. PDTは,ALAの光線力学的反応を利用した治療法であり,それ自身毒性が低い光感受性物質と低出力のレーザー光を使用するため,生体への負担が少ないのが特徴である.既に,脳外科領域や皮膚科領域では,ALA 1grを経口摂取した上で半導体レーザーで励起して局所診断を行っている.従って,本研究は動物実験の上で,直ちに臨床応用が可能である可能性が高く,腹膜転移症例に対する重要な治療法になるものと考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
MK-45移植腹膜転移マウスモデルは容易に作成でき,予備実験としてPpの発光観察実験を行ってきた. PDT研究モデルとしてのヌードラット腹膜播種モデルが,移植細胞株を変えても継続的な正嫡が困難であり,現在,金沢大学から譲り受けたMK-45P細胞で作成を行い,ようやく定着をみた次第である. PDT研究に用いていた光エネルギー測定器が不調で,1年分以上のデータが使えないことが判明した.やむを得ず機器を更新して新たに測定実験を再開している. 今後はPDT研究を早急に開始したい.
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今後の研究の推進方策 |
現在作成中の新規腹膜転移MK-45pモデルに赤色光中心の照射を行い,吸収光スペクトラムを測定する.その最大吸光スペクトラムの光線を照射し,腫瘍退縮を評価する. 今年度の研究計画としては,光エネルギー測定機器の更新により,中断していた腹腔内レーザー光散乱による全腹腔内照射のエネルギー測定を再開している.
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次年度の研究費の使用計画 |
細胞培養系と動物実験で移植がん細胞に光線治療を試みていたが,文献的に立証されている光照射量では細胞死の割合が一定せず,原因を調べた結果,光量を測定する機器が感度不良を起こしていたことが判明した.この1年あまりの実験データが役に立たないと思われる.そこで今回,精密照度計を発注しようやく使用可能となったので,実験を再開することができるが,期間を延長せざるを得なくなった. 培養系の実験で照度計の不調に気づかずデータが安定しなかったために動物実験が進捗しなかった.移植腫瘍マウスや薬剤を購入する費用が延長期間に必要である. 使途内容は,主に動物,薬剤,培養器剤,測定機材消耗品その他である.
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