研究課題/領域番号 |
23591960
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
荒木 俊光 三重大学, 医学部附属病院, 講師 (70343217)
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研究分担者 |
楠 正人 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50192026)
吉山 繁幸 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), リサーチアソシエイト (60444436)
大北 喜基 三重大学, 医学部, 助教 (20378342)
三木 誓雄 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員教授 (50242962)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 潰瘍性大腸炎 / 大腸癌 |
研究概要 |
【目的】潰瘍性大腸炎手術摘出標本直腸粘膜における一酸化窒素誘導合成酵素(inducible nitric oxide synthase:iNOS)、G-T transformationの原因となる8-oxo-7, 8-dihydro-2’-deoxyguanosine (8-oxodGと8-nitroguanine(8-NG)の発現を確認、臨床病理学的因子との関連を評価し、その意義を検討した。【方法】手術が施行された潰瘍性大腸炎患者141例を対象とした。最終病理学的診断でcolitic cancerと診断された9例、およびdysplasiaのみと診断された9例の計18例をneoplasm群、それ以外の123例をnormal群と定義した。切除標本において全例非癌/dyaplasia直腸粘膜に対してiNOS、8-oxodG、および8-NGの免疫組織染色を行った。染色強度をgrade0-3で評価し、0/1(低発現)と2/3(高発現群)に大別した。臨床病理学的因子は年齢(潰瘍性大腸炎発症時・手術時)、性別、潰瘍性大腸炎病態(罹患範囲・臨床経過・臨床的および組織学的重症度・病期)を調査した。【成績】免疫染色ではiNOSと8-NGの発現強度には有意な関連が認められた(p=0.038)。neoplasm群とnormal群の比較で有意な差が認められた臨床病理学的因子病悩期間のみであった。2群間と免疫染色強度の間ではneoplasm群においてnormal群と比較し8-NGの高発現群の割合が有意に多く認められた多変量解析ではneoplasm群のリスク因子は病悩期間7年以上と8-NGの高発現群であった。【結論】潰瘍性大腸炎の直腸粘膜における8-NG発現はdysplasia存在診断のマーカーとなりうる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、8-oxodGと8-NGは双方ともcolitic cancerおよびdysplasiaのマーカーになりうる可能性の検討を予定しており、今回8-NGについては有用な結果を得ることができた。研究の妥当性が示され、今後も計画通りに進行するものと予想される。
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今後の研究の推進方策 |
colitic cancerとdysplasia症例の直腸以外の部位において同様の免疫染色と臨床病理学的因子との関連を検討する。さらにiNOS、8-oxodG、8-NGで免疫染色を行った標本においてDNA damage を評価するため、proliferating cell nuclear antigen(PCNA)増殖型とp53 の発現を検討stem cell marker であるCD133、OCT4、およびNANOG の発現をreal-time PCR 法により測定し検討する。stem cell marker であるCD133、OCT4、およびNANOG の発現をreal-time PCR 法により測定し、さらに、これらの発現を免疫組織染色により確認。これらの結果と8-oxodG、8-nitroguanine およびp53 の発現の関連を解析する。さらに、これまでサーベイランス内視鏡が行われた症例における大腸粘膜生検組織標本において、同様の染色を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度からの研究費を加えて実験を継続しつつ結果のまとめ、学会発表や論文の作成を行う。(PCNA増殖型とp53 の発現およびstem cell marker であるCD133、OCT4、およびNANOG の発現を免疫染色とreal-time PCR 法により確認する。これらの結果と8-oxodG、8-nitroguanine およびp53 の発現の関連を解析する。これまでサーベイランス内視鏡が行われた症例における大腸粘膜生検組織標本において、同様の染色を行う。生検標本における炎症の程度、癌化リスクの判定が可能かどうかを検討する。さらに実験結果を再評価し、新たな項目追加の必要性について検討する。
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