研究課題/領域番号 |
23591967
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
猪股 雅史 大分大学, 医学部, 准教授 (60315330)
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研究分担者 |
北野 正剛 大分大学, 法人本部, 学長 (90169871)
守山 正胤 大分大学, 医学部, 教授 (90239707)
野口 隆之 大分大学, 医学部, 教授 (90156183)
萩原 聡 大分大学, 医学部, 講師 (50527661)
緒方 一美 大分大学, 医学部, 研究員 (70596048)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 小腸大腸肛門外科学 / 腫瘍学 |
研究概要 |
23年度の研究計画は、開発した多種類の新規抗酸化剤、αリポ酸誘導体およびビタミン誘導体のラジカルスカベンジ作用および癌抑制効果と、それらの関係の検討、がん抑制の機序をタンパク、遺伝子等で解析することであった。まず、開発した新規抗酸化剤のラジカルスカベンジ能の程度について、αリポ酸誘導体、ビタミンE誘導体のヒドロキシラジカル除去能、DPPHラジカル除去能を測定したところ、いずれの誘導体もオリジナルのαリポ酸や亜鉛、トコフェロールと比較し有意に強力なラジカルスカベンジ能を有していることが判明した。また、αリポ酸誘導体、ビタミンE誘導体はいずれも、大腸がん細胞、胃がん細胞、胆管癌細胞、乳がん細胞など、種々のがん腫に対し増殖抑制効果を発揮することが判明した。そのうちαリポ酸誘導体であるDHLH、DHLTauZnの大腸がん細胞に対する増殖抑制効果のメカニズムについて検討を行ったところ、いずれもカスパーゼ活性は上昇せず、FACSにおいて細胞周期停止が確認されたため、これらの物質の増殖抑制効果の機序にアポトーシスではなく細胞周期が関わっていることが確認された。またDHLTauZnにおいてオートファジー関連酵素であるLC-3の発現亢進が投与した大腸がん細胞のウエスタンブロット法における解析において認められ、電顕にてもオートファジーの像が確認できたことより細胞周期停止のみならず、オートファジーが増殖抑制の機序に関わることが示された。さらにこれらの現象にともないタンパク分子p53, p21,JNK, ERKの発現亢進を認めこれらを含むシグナルの増殖抑制効果に対する関与が示唆された。(Expert Opin Ther Targets.2012)さらに抗がん剤副作用に対する新規抗酸化物質の効果を脱毛誘発モデルマウスに投与したところ、脱毛が抑制され、論文化された。(Surg Today. 2011)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の研究予定であった新規抗酸化物質の抗酸化力の評価、増殖抑制効果の機序検討 を行うことに関しておおむね達成できた。浸潤モデルについては未だ検討できていないが、24年度の計画である、in vivo実験の皮下腫瘍モデルマウスを用いた増殖抑制効果検討、腹膜播種モデルに対する転移抑制効果、がん発現抑制の検討に関してもすでにモデルは完成し、実験も順調すすんでおり、いずれの検討においてもpreliminaryな実験において新規抗酸化物質投与による抑制効果が認められた。現在例数を増やして結果を詳細に検討している状況である。さらに、新規抗酸化剤は以前より抗炎症作用を有することが我々の研究にてわかっており、炎症の関与が疑われる抗がん剤副作用に対しても効果が期待されたため、炎症がその機序の一つとされている、抗がん剤誘発脱毛モデルに対するαリポ酸誘導体、ビタミンE誘導体の有効性を検討したところ、動物実験にて脱毛抑制効果が認められた。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、前年度に明らかにした抗腫瘍効果の有効な数種類の新規抗酸化剤を用いて、in vivoにおける解析を行う。すなわち、ラット皮下腫瘍増殖モデル・腫瘍転移モデル・発癌モデルを用い、抗腫瘍効果を検討し、そのメカニズムも解析する。平成25年度は、臨床応用を踏まえて、多種類の新規抗酸化剤の生体内のdrug delivery systemを明らかにし、さらに経口・静脈内・腹腔内などの投与経路によるαリポ酸誘導体の薬物動態と抗腫瘍効果の関係を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の研究費は以下の使用計画予定である。(1)in vitoの解析において、抗体などの試薬代を計画している。(2)in vivoの動物モデルにおいて、マウスおよびラットの動物代、抗体などの試薬代を計画している。
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