研究課題/領域番号 |
23591967
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
猪股 雅史 大分大学, 医学部, 准教授 (60315330)
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研究分担者 |
北野 正剛 大分大学, 法人本部, 学長 (90169871)
守山 正胤 大分大学, 医学部, 教授 (90239707)
野口 隆之 大分大学, 医学部, 病院長 (90156183)
萩原 聡 大分大学, 医学部, 講師 (50527661)
緒方 一美 大分大学, 医学部, 研究員 (70596048)
平塚 孝宏 大分大学, 医学部, 医員 (20600886)
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キーワード | 小腸大腸肛門外科学 / 腫瘍学 / 抗酸化剤 / 腫瘍増殖 |
研究概要 |
今年度は、新規抗酸化剤アルファリポ酸誘導体を用い、腫瘍増殖への抑制効果を検討した。(1)in vitroでは、大腸がん細胞株HT-29に対する影響を、生存率、細胞周期、カスパーゼ3/7の活性化、電子顕微鏡による細胞形態、ウエスタンブロット法にてオートファジー関連タンパクの発現、Bio-plexによるリン酸化タンパクの発現を解析した。アルファリポ酸誘導体の投与は、HT-29細胞に対して濃度時間依存的な細胞増殖抑制効果を示した。またG2/M期での細胞周期停止を誘導し、カスパーゼ3/7活性が有意に低く、アポトーシス誘導は認めなかった。電子顕微鏡ではネクローシスおよびオートファジーの所見を認め、LC-3-の発現はIからIIへの移行を示した。リン酸化蛋白分析にてP38MAPK, ERK、JNK, p53の有意なリン酸化亢進をきたした。細胞増殖抑制効果はJNK抑制剤にて有意に減弱した。(2)in vivoでは、bulb/c nu/nuマウスでHT-29細胞の皮下腫瘍モデルマウスを作成し、マウスを5群(生食投与群およびアルファリポ酸誘導体投与群(0.1, 1, 5, 5mg/kg/body))にランダムに振り分け、毎日1回6週間皮下注射し、腫瘍体積を計測した。アルファリポ酸誘導体0.1㎎および1mg/kg/body投与群が生食投与群に比べ有意な腫瘍増殖抑制効果を示した。以上より、新規抗酸化物質であるαリポ酸誘導体はin vitro, in vivoにておいて大腸がんの腫瘍増殖抑制効果を示し、in vitroにおける増殖抑制の機序には、MAPキナーゼのリン酸化を介したG2/M期での細胞周期停止、ネクローシス、オートファジーなどの非アポトーシス細胞死が関与していると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度予定していたin vitroおよび in vivoにおいて腫瘍増殖への影響を明らかにすることができた。 その中で、腫瘍増殖抑制効果が、アポトーシスではなく、オートファジーとネクローシスの機序によって生じることを明らかにできたことは、来年度の研究の発展に大きく寄与するものと考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、新規抗酸化剤における腫瘍の浸潤・転移における抑制効果を検討する予定である。そのために、マウスおよびラットの癌性腹膜炎モデルを用いて、新規抗酸化剤の胃癌細胞および大腸癌細胞の腹膜播種への影響を明らかにする。また、腹膜播種を生じる細胞株に関しては、大阪市立大学より供与を受け、実験がすすめられる準備が整っている。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の使用計画は、以下のとおりである。 (1)in vitroの実験における、抗体などの試薬経費を計画している。 (2)in vivoの実験におけるマウスおよびラットの動物経費を計画している。
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