研究課題/領域番号 |
23591969
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
三澤 裕美 奈良県立医科大学, 医学部, その他 (50281275)
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研究分担者 |
高木 都 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (00033358)
松吉 ひろ子 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (10448772)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 胚性幹細胞 / ハンギングドロップ / ES腸管 / セロトニン4受容体 / 腸壁内神経 |
研究概要 |
ヒルシュスプルング病などの神経欠損、消化管手術後の神経損傷、加齢などによる神経減少による排便機能の低下は患者の生命活動に多大な影響を与える。申請者のグループでは、マウス胚性幹(ES)細胞を分化誘導して蠕動様の運動を発生する腸管(ES腸管)をつくることができるが、本研究では、このES腸管に様々な神経の分化誘導因子を作用させて、神経の選択的な分化誘導法を確立し、完全な神経系をそなえた大きなサイズのES腸管、および特異的神経のみを備えたES腸管をつくり、神経欠損による腸疾患の病態を解明、消化管の発生・再生機構を明らかにし、治療への手がかりを探る事を目的とする。ES細胞は、理化学研究所発生・再生化学総合センター多能性幹細胞研究チーム丹羽仁史先生より供与してもらったES細胞を用いる。細胞の未分化維持のための培養は、10%FBS/ES-DMEM 培養液に分化抑制因子として Leukemia Inhibitory Factor(LIF)を添加し、5%CO2の条件下でインキュベートする。胚様体(EB)ボールから腸管様器官を作製する。EBボール は、LIF 無添加培養液を用いてディッシュ上で浮遊培養して作製する。6-7日後にLIF非存在下のハンギングドロップ中で分化したEBを回収後、付着培養する。培養14-21日間で動き始めるES腸管を作製する。まずハンギングドロップ中にBDNFを培地に加え、腸壁内神経系の分化誘導を行う。ついで、低分子化合物である5-HT4受容体刺激薬であるmosapride citrate をハンギングドロップ中に加えるとES腸管に腸壁内神経系を分化誘導させることができた。この効果は5-HT4受容体遮断薬により阻害されたことから5-HT4受容体活性化を介する事が証明された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究実績の概要に述べた成果は、Biochem Biophys Res Commun 406: 529-533, 2011に掲載された。したがって、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度の成果を基にして、研究代表者三澤が研究分担者高木と協力して、5-HT4受容体刺激薬を培地に加えるのみならず、これまでの経験を生かし、様々な実験条件下(研究分担者高木が譲り受けたペプチドゲルによる3次元培養など)で各種神経分化誘導因子を添加し、その調節機構が構築されたより完成度の高いES(またはiPS)腸管および特異的神経を備えた腸管の作製方法を確立する。また内因性のセロトニンの効果をみるためにSERTの遮断薬の効果も検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
引き続き、細胞培養用消耗品、免疫染色用の抗体・試薬等に使用予定
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