研究概要 |
HSP27 の発現および機能抑制による抗癌剤(5-FU)感受性亢進よる新たな大腸癌治療法を開発すること、5-FU以外の抗癌剤(CPT-11、l-OHP)耐性とHSP27との関連について明らかにすることを目的とし以下の実験を行い成果を得た。1)HSP27発現抑制による5-FUの抗腫瘍効果の検討をxenograft modelで検証した。HSP27高発現で5-FU低感受性のヒト大腸癌細胞株HCT116にHSP27 shRNAを導入し、stable knock down transfectantsを作成した。In vitroにおいてHSP27蛋白発現量と5-FU感受性(IC50)との相関が確認できた。さらに、HSP27 shRNA導入stable clonesを用いたxenograft model(ヌードマウス皮下移植モデル)において、HSP 27蛋白抑制clonesでは5-FU感受性が増強(腫瘍が縮小)する結果が得られ、xenograft modelにおいてもHSP27が5-FU感受性に関与する因子であることを明らかにした。2)他抗癌剤(CPT-11およびl-OHP)感受性とHSP27発現との関連について検討した。各種ヒト大腸癌細胞株(HT29, SW480, SW620, RKO, SW1116, T84, WiDr, HCT-116, HCT-15, LoVo, DLD-1, Colo201, Colo205)におけるCPT-11とl-OHPの感受性をMTT法によりIC50で評価し、HSP27蛋白発現(western blot法)と比較検討した。in vitroにおいてHSP27を高発現する大腸癌細胞株では5-FUと同様に、CPT-11およびl-OHPに抵抗性を示した。以上より、HSP27は大腸癌細胞において多剤抗癌剤に対する感受性(耐性)因子である可能性が示された。
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今後の研究の推進方策 |
1)GFP組み込み HSP27 siRNA plasmid封入抗EGF-R抗体結合のPMDN complexの作成と特異性の検討 抗EGF-R抗体結合PMDN complexを作成し、GFP組み込みHSP27 siRNA plasmidを封入する。このPMDN complexを各種ヒト大腸癌細胞株にin vitroで添加し、それぞれの細胞を蛍光顕微鏡にて観察し組織移行性を確認する。Negative controlとしてscramble siRNA plasmid 封入抗EGFR 抗体結合 PMDN complexを作製し、これと比較して大腸癌細胞株におけるHSP27蛋白の発現レベルと5-FU耐性に対する抑制効果をin vitroで検証する。2)5-FU感受性とリン酸化 HSP27(p-HSP27)発現およびリン酸化阻害との関連 各種ヒト大腸癌細胞株(HT29, SW480, SW620, RKO, SW1116, T84, WiDr, HCT-116, HCT-15, LoVo, DLD-1, Colo201, Colo205)における5-FU暴露時および非暴露時におけるHSP27蛋白発現変化およびp-HSP27(ser15, ser78, ser82)発現変化と5-FU感受性(IC50)との関連を検討する。また、同様にHSP27 stable knock downおよびstabke expression transfectantを用いて検討する。さらに、各種HSP27リン酸化酵素阻害剤(SB203580, Go6983, GF109203, Rapamycin)を用いてHSP27 ser15, ser78,ser82のリン酸化を阻害し、リン酸化抑制程度と5-FU感受性変化との関連をin vitroおよび動物モデルで検討する。
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