研究課題/領域番号 |
23591972
|
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
緑川 泰 日本大学, 医学部, 助教 (10292905)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 癌 / 薬剤反応性 / 遺伝子 / マイクロアレイ |
研究概要 |
切除不能大腸癌に対する抗癌剤治療の感受性を、大腸癌凍遺伝子発現プロファイルによりランダムフォレスト法を用いて予測した。この抗癌剤感受性予測モデルの構築についてはアンサンブル法として複数の機械学習アルゴリズムにより、その有用性を示した。さらに大腸癌の遺伝子解析として発癌・進展メカニズムの解明をマイクロRNAに着目し、癌抑制遺伝子の制御に関するmiR-22、大腸癌肝転移におけるmiR-413などの機能解析なども行った。以上の研究成果は以下の4誌に報告した。Tsuchiya N, et al. Post-transcriptional regulation of p21 in the determination of p53-dependent cellular fate by the tumor-suppressor miR-22. Cancer Res. 2011; 71: 4628-39.Tsuji S, et al. Potential responders to FOLFOX therapy for colorectal cancer by Random Forests analysis. Br J Cancer. 2012; 106: 126-32.Midorikawa Y, et al. Genomic approach towards personalized anti-cancer drug therapy. Pharmacogenomics. 2012; 13: 191-9.Okamoto K, et al. miR-493 induction during carcinogenesis blocks metastatic settlement of colon cancer cells in liver. EMBO J. 2012; 31: 1752-63.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
解析目標症例数が当初の予定より早い時期に到達し発現アレイデータの解析により生存率に有意差が得られたため、当初の計画よりも早期に解析結果を発表することができた。とくに薬剤感受性モデルの構築は近い将来に高額医療である抗癌剤治療、分子標的治療薬の使用にあたり、個別化医療か可能であることを示唆する結果である。 また、マイクロRNA解析により大腸癌の発癌・転移のメカニズムを明らかにした点も本研究の成果の一つであり、p21, p53などの癌抑制遺伝子のmiR-22による制御機構、miR-493による肝転移抑制機構を世界に先駆けて発表した。この大腸癌におけるターゲット遺伝子の同定は新規抗癌剤候補遺伝子でもあり、本研究により新たな大腸癌治療薬の可能性を示すことが可能であった。 以上のデータを本研究期間中に癌関連の主要英文誌に報告することが可能であり、さらに、これらのデータを元に新たな薬剤感受性モデル、大腸癌発癌・進展メカニズムの解明、プロモーターメチル化との統合解析へと発展してゆく可能性もあり、当初の計画以上に本研究は進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
さらに発現解析のみでなく、包括的エピゲノム解析を併せて行い、大腸癌患者の多角的にゲノムの視点から抗癌剤化学療法に対する層別化を行う。解析対象となる症例の予後を引き続き追跡調査し、ランダムフォレストによって分類された2群間での全生存期間についての比較を行い、研究開始後に得られた検体についてはこれまでに得られた予測遺伝子を用いて前向きの効果予測を行い、臨床応用に可能であるかどうかについての検討も行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
前年度の解析により得られた遺伝子発現データに加えてエピゲノム解析データとの遺伝子統合解析を行うためにとしてプロモーターメチル化アレイ (Illumina Infinium HumanMethylation450 BeadChip) によるデータの収集を行う。そのための実験用試薬やチップを購入する必要がある。これらの解析結果により研究初年度に得られたデータとの妥当性を検討し、分子生物学的な意義についての検討を行う。 これらの解析結果については広く世界へ知見を発信するために国内だけでなく国際学会での発表、および学術誌への投稿に研究費を使用する予定である。
|