研究課題/領域番号 |
23591973
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
山野 智基 兵庫医科大学, 医学部, 助教 (00599318)
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研究分担者 |
久保 秀司 兵庫医科大学, 医学部, 准教授 (10441320)
冨田 尚裕 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (00252643)
大山 秀樹 兵庫医科大学, 医学部, 准教授 (90280685)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 癌ワクチン |
研究概要 |
本実験は制限増殖型アデノウイルスを用いるため、文部科学大臣確認実験に相当する。そのため平成23年秋に文部科学省に実験計画書、申請書を提出し平成23年度12月1日付で文部科学大臣より確認通知を受領している(23受文科振2141号)。その後平成24年2月17日に兵庫医科大学に本実験を行うための動物実験計画書、遺伝子組み換え実験計画書を提出しており、認可待ちである(平成24年4月18日現在)。従って研究代表者である山野は制限増殖型アデノウイルスを用いた研究を兵庫医科大学で行うことが出来ていない状態であり研究計画に遅れが生じている。 本研究の目的はケモカインであるCCL21をアジュバントとして用いることで腫瘍溶解アデノウイルスに感染した癌細胞を癌ワクチンの抗原と考えて抗腫瘍免疫を増強し、腫瘍溶解アデノウイルスによる抗腫瘍効果を増強することである。 同ウイルスはヒトMidkineプロモーターによりウイルスの増殖を制御しているため、マウス細胞での増殖効率が低いことが危惧された。そこでまず初めにマウス大腸癌細胞株(CT26及びCMT93)における同プロモーター活性を、ルシフェラーゼアッセイにより確認する実験を行った(プラスミドを遺伝子導入)。その結果CT26細胞において、ヒトMidkineプロモーター活性はCMVプロモーターの9分の1程度ではあるが、SV40プロモーターと同等、ヒトTERTプロモーターの2-3倍である事を確認した。また分担研究者(久保)による実験ではCT26及びCMT93細胞において、Midkineプロモーター制御型腫瘍溶解アデノウイルスがウイルス濃度依存性に感染増殖し殺細胞効果を示すことを確認している。一方でCT26及びCMT93細胞は、ヌードマウスの皮下接種によりほぼ全例腫瘍を形成することを確認している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究の目的はケモカインであるCCL21をアジュバントとして用いることで腫瘍溶解アデノウイルスに感染した癌細胞を癌ワクチンの抗原と考えて抗腫瘍免疫を増強し、腫瘍溶解アデノウイルスによる抗腫瘍効果を増強することである。現状では遺伝子組み換え実験、動物実験の申請許可が兵庫医大から出ておらず研究が進んでいない状態である。しかしながら細胞実験では腫瘍溶解アデノウイルスがマウス癌細胞でも殺細胞効果を示すことが示されており、今後申請許可が出た時点からでも研究計画は期間内に実行出来るものと考えている。更に当初の実験計画に従って腫瘍内に直接ウイルスを投与してもの抗腫瘍効果が出ない場合の対策についても考えている。ウイルスを腫瘍に直接投与した際の感染効率が低いのが主な原因と考えられるので、in vitroでウイルスを腫瘍細胞に十分感染させそれを癌抗原として用いれば抗腫瘍効果が誘導できると予想される。また大腸癌治療に用いられているオキサリプラチンでアポトーシスとなった癌細胞では、小胞体にあるCalreticulinと言われるタンパクが細胞表面に移動することで腫瘍免疫を誘導しワクチン効果を示すことが報告されている。従って腫瘍溶解アデノウイルスに感染した癌細胞のCalreticulinが細胞表面に移動しているかを確認することでCalreticulinの細胞表面への移動が抗腫瘍免疫誘導の一般的な指標となるかどうかを確認することが出来ると考えている。動物実験の結果に関わらず、腫瘍溶解アデノウイルスが癌細胞に感染し癌細胞がアポトーシスになっただけでCalreticulinが細胞表面に移動しないのであればオキサリプラチンを併用することで腫瘍免疫が増強出来るかも検討する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
実験許可が下りれば実験計画書に従い細胞培養実験から進めていく。Calreticulinについては抗腫瘍免疫に関して重要な分子と考えられるので、Calreticulinの細胞表面への移動はフローサイトメトリーを用いて検討する。この際にオキサリプラチンをポジティブコントロールとして用い、イリノテカンはネガティブコントロールとして用いる。Calreticulinの細胞表面への移動の検討は当初の実験計画には無かったものであるが、ウイルスを用いた抗腫瘍免疫誘導のメカニズムを解明するためには重要な実験と考えており、今後の発展が期待出来る。動物実験で用いる細胞株はCT26とCMT93(MC38から変更)であるが、細胞培養実験で腫瘍溶解アデノウイルスによる殺細胞効果が高い方を用いる。動物実験においては腫瘍におけるウイルス導入効率が非常に重要となり、導入効率が低い場合はアポトーシスを起こす細胞が少なく癌細胞が腫瘍抗原として作用しないと考えられる。従ってその場合は細胞培養で腫瘍細胞に腫瘍溶解アデノウイルスベクターを感染させて導入効率を上昇させ、アポトーシス細胞の数を増やし腫瘍抗原となる癌細胞の数を増やすことを考えている。この細胞をケモカインCCL21と併用するが、CCL21を打つタイミングをウイルス感染腫瘍細胞投与の24時間前、同時、24時間後とする。ワクチンの効果を見るためにワクチン前に腫瘍細胞を接種する治療ワクチン群とワクチン後に腫瘍細胞を接種する予防ワクチン群に分けて検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
動物実験に用いる動物購入に最も研究費が掛かる。マウスの内訳は(1)in vivoでの腫瘍溶解性アデノウイルスの抗腫瘍効果の確認。マウス大腸癌細胞をマウス皮下に接種し、皮下腫瘍モデルを作成。ウイルスを腫瘍内投与する。1群5匹として5(1群あたり)×3(ウイルス量の評価)×2(実験回数)=30匹必要である。(2)アジュバントとしてのCCL21の併用効果及び至適投与条件の検討(皮下腫瘍内にウイルス投与)。A)無治療群:PBS投与。B)CCL21単独群:腫瘍内にCCL21のみを投与。C)ウイルス単独群:腫瘍溶解性アデノウイルスを腫瘍内に投与。D)併用CCL21前投与群:CCL21を腫瘍溶解性アデノウイルス投与24時間前に腫瘍内投与。E)併用CCL21後投与群:CCL21を腫瘍溶解性アデノウイルス投与24時間後に腫瘍内投与。F)同時併用群:CCL21と腫瘍溶解性アデノウイルスを同時に腫瘍内に投与。A)-B)は1群5匹、C)-F)は1群7匹として(5匹×2+7匹×4)X3回で114匹のマウスが必要である。(3)アジュバントとしてのCCL21の併用効果及び至適投与条件の検討(ウイルス感染細胞を投与)。1)ウイルス感染細胞の皮下接種のみ。2)CCL21をウイルス感染細胞皮下接種24時間前に皮下投与。3)CCL21をウイルス感染細胞皮下接種24時間後に皮下投与。4)CCL21をウイルス感染細胞皮下接種と同時に皮下投与。1)-4)に対して1群7匹として、7(1群あたり)×4(検討する群数)×3(実験回数) ×2(治療群と予防群)=168匹のマウスが必要である。合計で312匹となり約90万円は掛かる。その他では培養試薬20万円、培養器具20万円、遺伝子工学研究試薬30万円、病理組織試薬20万円は掛かり、総額で180万円程度となる予定であり平成25年分から繰り入れする可能性が高い。
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